判決を閲覧したら控訴期間の始まり(IT裁判FAQ25)
Q 令和8年5月から、判決はどのようにして送られることになるのでしょうか。
A 大雑把にいうと、裁判所が、判決書をmintsにアップロードします。そのアップロードされた判決書を、各弁護士が閲覧またはダウンロードして確認することになりそうです。
Q 控訴期間はいつから始まりますか。
A 原則として、閲覧またはダウンロードした日からです。
Q 閲覧またはダウンロードしなければ、永久に控訴期間が始まらないということでしょうか。
A 判決書がアップロードされると、各弁護士には電子メールで通知が行きます。その通知が発信されてから1週間経過するとダウンロードしたものとみなされ、控訴期間が始まります。
【解説】
前回は、訴状の提出という、いわば、訴訟の始まりの部分についてお話しました。
今日は、判決という訴訟の終わりの段階について、お話します。
まず、判決書は、「送達」によって送られることになっています。
そして、送達の効力を定めた条文は、以下のとおりです。
(電子情報処理組織による送達の効力発生の時期)
第百九条の三 前条第一項の規定による送達は、次に掲げる時のいずれか早い時に、その効力を生ずる。
一 送達を受けるべき者が送達すべき電磁的記録に記録されている事項を最高裁判所規則で定める方法により表示をしたものの閲覧をした時
二 送達を受けるべき者が送達すべき電磁的記録に記録されている事項についてその使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録をした時
三 前条第一項本文の通知が発せられた日から一週間を経過した時
1号が閲覧、2号がダウンロード(「記録」がダウンロードを意味するそうです。一問一答p41)を意味します。そして3号が通知発信後1週間を意味します。
なお、ここでいう「送達を受けるべき者」は、その旨の届出をした者を指します(令和8年5月民訴法109条の2第1項ただし書)。
まず、弁護士は、届出が義務付けられます(令和8年5月民訴法132条の10第2項、第1項)。
さらに、仮に弁護士が就いていたとしても、依頼者様本人も届出ができます(届出を禁止する条文が無い)。
そのため、「送達を受けるべき者」が、弁護士と依頼者様の2名になることもありえます。
「送達を受けるべき者」が複数の場合、裁判所としては、全員に送達をする運用を採るようです(弁護士向け「改修mintsのトリセツ」)。
そうなると、たとえば、弁護士が多忙で、判決書を閲覧・ダウンロードしていなくても、依頼者様が判決書を閲覧した場合、依頼者様が判決書を閲覧した時から控訴期間が始まることになります。