特定技能にも触れます2

さて、特定技能の方を受け入れる機関としては、何を守れば良いのでしょうか。
条文は文末に掲載しましたので、興味のある方はお読みください。


まず、重要なのは、 1号の「労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。」です。
労働法を守らなければならないのは当然ですが、 社会保険や租税に関する法令も遵守することが求められます。
労災保険・雇用保険に加入したり、加入義務があれば社会保険にも加入するということになります。

次に重要なのは、2号の 「特定技能雇用契約の締結の日前一年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。」です。
何となく、外国人を離職させていなければよいと勘違いしてしまいそうです。しかし、「労働者を離職させていないこと。」なので、日本人でも同じです。

つまり、日本人を含め、既にいる従業員を追い出してまで特定技能外国人を招くことは、人手不足解消という目的にそぐわないから認められないという意味です。ちなみに、雇い止めも離職させたことになりますので、特定技能外国人を招こうとお考えになっている企業は重々ご注意ください。

また、4号のリも要注意です。4号のリは、処罰されたか否かを問いません。したがって、4号のリにあたる行為を行っただけで、即、特定技能受入不可となります。
とりわけ要注意なのは、4号のリ(9)の「届出をせず」です。虚偽の届出をしたような企業が特定技能外国人受入を認められなくなるのは、まだ納得できると思います。わざとやっているからです。しかし、「届出をせず」も含むとなると、わざとではなく、うっかり届出を忘れた場合でも、該当してしまいます。しかも、ここでいう「届出」は相当広範囲に渡ります。一つでも、うっかり忘れると、不法就労助長罪の問題が出てくるわけです。

届出を定めた条文は以下のとおりです。

(特定技能所属機関による届出)
第十九条の十八 特定技能雇用契約の相手方である本邦の公私の機関(以下この款及び第八章において「特定技能所属機関」という。)は、次の各号のいずれかに該当するときは、法務省令で定めるところにより、出入国在留管理庁長官に対し、その旨及び法務省令で定める事項を届け出なければならない。
一 特定技能雇用契約の変更(法務省令で定める軽微な変更を除く。)をしたとき、若しくは特定技能雇用契約が終了したとき、又は新たな特定技能雇用契約の締結をしたとき。
二 一号特定技能外国人支援計画の変更(法務省令で定める軽微な変更を除く。)をしたとき。
三 第二条の五第五項の契約の締結若しくは変更(法務省令で定める軽微な変更を除く。)をしたとき、又は当該契約が終了したとき。
四 前三号に掲げるもののほか、法務省令で定める場合に該当するとき。
2 特定技能所属機関は、前項の規定により届出をする場合を除くほか、法務省令で定めるところにより、出入国在留管理庁長官に対し、次に掲げる事項を届け出なければならない。
一 受け入れている特定技能外国人(特定技能の在留資格をもつて本邦に在留する外国人をいう。以下この款及び第八章において同じ。)の氏名及びその活動の内容その他の法務省令で定める事項
二 第二条の五第六項の規定により適合一号特定技能外国人支援計画を作成した場合には、その実施の状況(契約により第十九条の二十七第一項に規定する登録支援機関に適合一号特定技能外国人支援計画の全部の実施を委託したときを除く。)
三 前二号に掲げるもののほか、特定技能外国人の在留管理に必要なものとして法務省令で定める事項

このように書くと、「意外と少ないな」とお考えになる方もいらっしゃるでしょう。
しかし、1号の「契約の変更」が含まれていることに注意です。
「変更」というからには、期間・賃金・休暇・労働時間を変更しただけでも届け出なくてはならないのです。
しかも、項目によっては、特定技能外国人の方に有利な変更の場合でも届出必要とされています。
たとえば、基本賃金の増額は届出が必要とされています。
また、何も変化がなくても、3カ月に1回は定期的な届出が必要です。

このように、特定技能の方をお迎えしようとすると、多大な準備が必要です。ぜひ、弁護士に手伝わせてください。

【受入機関の要件】

第二条 法第二条の五第三項の法務省令で定める基準のうち適合特定技能雇用契約の適正な履行の確保に係るものは、次のとおりとする。
一 労働、社会保険及び租税に関する法令の規定を遵守していること。
二 特定技能雇用契約の締結の日前一年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約において外国人が従事することとされている業務と同種の業務に従事していた労働者(次に掲げる者を除く。)を離職させていないこと。
イ 定年その他これに準ずる理由により退職した者
ロ 自己の責めに帰すべき重大な理由により解雇された者
ハ 期間の定めのある労働契約(以下「有期労働契約」という。)の期間満了時に当該有期労働契約を更新しないことにより当該有期労働契約を終了(労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合又は当該有期労働契約の期間満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、当該有期労働契約の相手方である特定技能所属機関が当該労働者の責めに帰すべき重大な理由その他正当な理由により当該申込みを拒絶することにより当該有期労働契約を終了させる場合に限る。)された者
ニ 自発的に離職した者
三 特定技能雇用契約の締結の日前一年以内又はその締結の日以後に、当該特定技能雇用契約の相手方である特定技能所属機関の責めに帰すべき事由により外国人の行方不明者を発生させていないこと。
四 次のいずれにも該当しないこと。
イ 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
ロ 次に掲げる規定又はこれらの規定に基づく命令の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
(※省略。要するに、労働、社会保険及び租税に関する法令違反で罰金刑を受けていないことが要件である。)
ハ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律(平成三年法律第七十七号)の規定(同法第五十条(第二号に係る部分に限る。)及び第五十二条の規定を除く。)により、又は刑法(明治四十年法律第四十五号)第二百四条、第二百六条、第二百八条、第二百八条の二、第二百二十二条若しくは第二百四十七条の罪若しくは暴力行為等処罰に関する法律(大正十五年法律第六十号)の罪を犯したことにより、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
ニ 健康保険法(大正十一年法律第七十号)第二百八条、第二百十三条の二若しくは第二百十四条第一項、船員保険法(昭和十四年法律第七十三号)第百五十六条、第百五十九条若しくは第百六十条第一項、労働者災害補償保険法(昭和二十二年法律第五十号)第五十一条前段若しくは第五十四条第一項(同法第五十一条前段の規定に係る部分に限る。)、厚生年金保険法(昭和二十九年法律第百十五号)第百二条、第百三条の二若しくは第百四条第一項(同法第百二条又は第百三条の二の規定に係る部分に限る。)、労働保険の保険料の徴収等に関する法律(昭和四十四年法律第八十四号)第四十六条前段若しくは第四十八条第一項(同法第四十六条前段の規定に係る部分に限る。)又は雇用保険法(昭和四十九年法律第百十六号)第八十三条若しくは第八十六条(同法第八十三条の規定に係る部分に限る。)の規定により、罰金の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から起算して五年を経過しない者
ホ 精神の機能の障害により特定技能雇用契約の履行を適正に行うに当たっての必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者
ヘ 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
ト 技能実習法第十六条第一項の規定により実習認定を取り消され、当該取消しの日から起算して五年を経過しない者
チ 技能実習法第十六条第一項の規定により実習認定を取り消された者が法人である場合(同項第三号の規定により実習認定を取り消された場合については、当該法人がロ又はニに規定する者に該当することとなったことによる場合に限る。)において、当該取消しの処分を受ける原因となった事項が発生した当時現に当該法人の役員(業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいい、相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者を含む。ヲにおいて同じ。)であった者で、当該取消しの日から起算して五年を経過しないもの
リ 特定技能雇用契約の締結の日前五年以内又はその締結の日以後に、次に掲げる行為その他の出入国又は労働に関する法令に関し不正又は著しく不当な行為をした者
(※(1)~(8)まで省略 要するに、外国人に対し、パスポート取り上げなど、不当な行為をしていないこと)
(9) 法第十九条の十八の規定による届出をせず、又は虚偽の届出をする行為
(10) 法第十九条の二十第一項の規定による報告若しくは帳簿書類の提出若しくは提示をせず、若しくは虚偽の報告若しくは虚偽の帳簿書類の提出若しくは提示をし、又は同項の規定による質問に対して答弁をせず、若しくは虚偽の答弁をし、若しくは同項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避する行為
(11) 法第十九条の二十一第一項の規定による処分に違反する行為
ヌ 暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律第二条第六号に規定する暴力団員(以下「暴力団員」という。)又は暴力団員でなくなった日から五年を経過しない者(以下「暴力団員等」という。)
ル 営業に関し成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であって、その法定代理人がイからヌまで又はヲのいずれかに該当するもの
ヲ 法人であって、その役員のうちにイからルまでのいずれかに該当する者があるもの
ワ 暴力団員等がその事業活動を支配する者
五 特定技能雇用契約に係る外国人の活動の内容に係る文書を作成し、当該外国人に当該特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所に当該特定技能雇用契約の終了の日から一年以上備えて置くこととしていること。
六 特定技能雇用契約を締結するに当たり、外国人又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他当該外国人と社会生活において密接な関係を有する者が、当該特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、他の者に、保証金の徴収その他名目のいかんを問わず金銭その他の財産の管理をされている場合、又は、他の者との間で、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結している場合にあっては、そのことを認識して当該特定技能雇用契約を締結していないこと。
七 他の者との間で、特定技能雇用契約に基づく当該外国人の本邦における活動に関連して、当該特定技能雇用契約の不履行について違約金を定める契約その他の不当に金銭その他の財産の移転を予定する契約を締結していないこと。
八 法別表第一の二の表の特定技能の項の下欄第一号に掲げる活動を行おうとする外国人と特定技能雇用契約を締結しようとする本邦の公私の機関にあっては、一号特定技能外国人支援に要する費用について、直接又は間接に当該外国人に負担させないこととしていること。
九 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関にあっては、次のいずれにも該当すること。
イ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、次のいずれかに該当し、かつ、外国人が派遣先において従事する業務の属する特定産業分野を所管する関係行政機関の長と協議の上で適当であると認められる者であること。
(1) 当該特定産業分野に係る業務又はこれに関連する業務を行っている者であること。
(2) 地方公共団体又は(1)に掲げる者が資本金の過半数を出資していること。
(3) 地方公共団体の職員又は(1)に掲げる者若しくはその役員若しくは職員が役員であることその他地方公共団体又は(1)に掲げる者が業務執行に実質的に関与していると認められる者であること。
(4) 外国人が派遣先において従事する業務の属する分野が農業である場合にあっては、国家戦略特別区域法(平成二十五年法律第百七号)第十六条の五第一項に規定する特定機関であること。
ロ 外国人を労働者派遣等の対象としようとする本邦の公私の機関が、第一号から第四号までのいずれにも該当する者に当該外国人に係る労働者派遣等をすることとしていること。
十 事業に関する労働者災害補償保険法による労働者災害補償保険に係る保険関係の成立の届出その他これに類する措置を講じていること。
十一 特定技能雇用契約を継続して履行する体制が適切に整備されていること。
十二 特定技能雇用契約に基づく外国人の報酬を、当該外国人の指定する銀行その他の金融機関に対する当該外国人の預金口座又は貯金口座への振込み又は当該外国人に現実に支払われた額を確認することができる方法によって支払われることとしており、かつ、当該預金口座又は貯金口座への振込み以外の方法によって報酬の支払をした場合には、出入国在留管理庁長官に対しその支払の事実を裏付ける客観的な資料を提出し、出入国在留管理庁長官の確認を受けることとしていること。
十三 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。
2 法第二条の五第三項の法務省令で定める基準のうち適合一号特定技能外国人支援計画の適正な実施の確保に係るものは、次のとおりとする。
一 次のいずれかに該当すること。
イ 過去二年間に法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格(収入を伴う事業を運営する活動又は報酬を受ける活動を行うことができる在留資格に限る。ロにおいて同じ。)をもって在留する中長期在留者の受入れ又は管理を適正に行った実績があり、かつ、役員又は職員の中から、適合一号特定技能外国人支援計画の実施に関する責任者(以下「支援責任者」という。)及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の適合一号特定技能外国人支援計画に基づく支援を担当する者(以下「支援担当者」という。)を選任していること(ただし、支援責任者は支援担当者を兼ねることができる。以下同じ。)。
ロ 役員又は職員であって過去二年間に法別表第一の一の表、二の表及び五の表の上欄の在留資格をもって在留する中長期在留者の生活相談業務に従事した経験を有するものの中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の支援担当者を選任していること。
ハ イ又はロの基準に適合する者のほか、これらの者と同程度に支援業務を適正に実施することができる者として認めたもので、役員又は職員の中から、支援責任者及び外国人に特定技能雇用契約に基づく活動をさせる事業所ごとに一名以上の支援担当者を選任していること。
二 特定技能雇用契約の当事者である外国人に係る一号特定技能外国人支援計画に基づく職業生活上、日常生活上又は社会生活上の支援を当該外国人が十分に理解することができる言語によって行うことができる体制を有していること。
三 一号特定技能外国人支援の状況に係る文書を作成し、当該一号特定技能外国人支援を行う事業所に特定技能雇用契約の終了の日から一年以上備えて置くこととしていること。
四 支援責任者及び支援担当者が、外国人を監督する立場にない者その他の一号特定技能外国人支援計画の中立な実施を行うことができる立場の者であり、かつ、第一項第四号イからルまでのいずれにも該当しない者であること。
五 特定技能雇用契約の締結の日前五年以内又はその締結の日以後に、法第十九条の二十二第一項の規定に反して適合一号特定技能外国人支援計画に基づいた一号特定技能外国人支援を怠ったことがないこと。
六 支援責任者又は支援担当者が特定技能雇用契約の当事者である外国人及びその監督をする立場にある者と定期的な面談を実施することができる体制を有していること。
七 前各号に掲げるもののほか、法務大臣が告示で定める特定の産業上の分野に係るものにあっては、当該産業上の分野を所管する関係行政機関の長が、法務大臣と協議の上、当該産業上の分野に特有の事情に鑑みて告示で定める基準に適合すること。