技能実習生制度自体はホワイト2

前回は、「実習生受入企業は、監理団体の監査を受けなければならない」と申し上げました。
今回は、どんな監査を受けるのかを申し上げます。

監査は労働法以上に厳しい

技能実習生の方も、当然のことながら、働いていらっしゃることになります。したがって、受入企業は、労働法を守らねばならないことは当然です。

(監理責任者の設置等)
第四十条 3 監理団体は、団体監理型実習実施者が、団体監理型技能実習に関し労働基準法、労働安全衛生法その他の労働に関する法令に違反しないよう、監理責任者をして、必要な指導を行わせなければならない。

監理団体による監査のためのチェックリスト」によると、たとえば、労働条件の明示、最低賃金の順守、労働保険・社会保険への加入が挙げられています。特に、最低賃金については、時々、「実習生だから最低賃金を下回っても良い」と勘違いしている企業が居ると聞いておりますので、ご注意ください。

しかし、監査の内容は、労働法のみではありません。

(禁止行為)
第四十六条 実習監理を行う者(第四十八条第一項において「実習監理者」という。)又はその役員若しくは職員(次条において「実習監理者等」という。)は、暴行、脅迫、監禁その他精神又は身体の自由を不当に拘束する手段によって、技能実習生の意思に反して技能実習を強制してはならない。

たとえば、↑のような規定もあります。技能実習法46条の規定がなくても、刑法に触れる可能性が高いとは思います。しかし、わざわざこのような規定を作ったということは、よほど、「不当に拘束する手段」で技能実習が行われた例が多かったということでしょう。

(禁止行為)
第四十八条 技能実習を行わせる者若しくは実習監理者又はこれらの役員若しくは職員(次項において「技能実習関係者」という。)は、技能実習生の旅券(入管法第二条第五号に規定する旅券をいう。第百十一条第五号において同じ。)又は在留カード(入管法第十九条の三に規定する在留カードをいう。同号において同じ。)を保管してはならない。

↑の規定で注目していただきたいのは、「意思に反して」という文言がないことです。つまり、万一、実習生の方が、受入企業に対し、「パスポートや在留カードを預かってほしい。」という依頼をしたとしても、受入企業は、パスポートや在留カードを保管してはいけないという意味なのです。

かつては、逃亡防止のためか、パスポートや在留カードを預かってしまう受入企業があったと聞きます。そのような行為を根絶しようとするものでしょう。
なお、念のため申し上げると、パスポート・在留カード不携帯は、そもそも違法です(入管難民法23条)。

第四十七条 実習監理者等は、技能実習生等(技能実習生又は技能実習生になろうとする者をいう。以下この条において同じ。)又はその配偶者、直系若しくは同居の親族その他技能実習生等と社会生活において密接な関係を有する者との間で、技能実習に係る契約の不履行について違約金を定め、又は損害賠償額を予定する契約をしてはならない。
2 実習監理者等は、技能実習生等に技能実習に係る契約に付随して貯蓄の契約をさせ、又は技能実習生等との間で貯蓄金を管理する契約をしてはならない。

さらに、↑のような規定もあります。この規定にも「意思に反して」という文言がありません。万一、実習生の方が、受入企業に対し、「給料の一部を天引きして預かっていてほしい。」といったとしても、受入企業は、預かってはいけないのです。

かつては、逃亡防止のため、給料の一部を天引きして預かってしまう受入企業があったと聞きます。すなわち、「帰国するときには返す。」といって給料を預かり、たとえどんなことがあっても、逃亡をしないように仕向けるのです。これでは、実習生の方に実習を辞める自由がなくなり、実習生の立場が弱くなってしまいます。そのため、意思に反そうと反すまいと、給料の一部預かりは禁止なのです。

第四十八条 技能実習を行わせる者若しくは実習監理者又はこれらの役員若しくは職員(次項において「技能実習関係者」という。)は、技能実習生の旅券(入管法第二条第五号に規定する旅券をいう。第百十一条第五号において同じ。)又は在留カード(入管法第十九条の三に規定する在留カードをいう。同号において同じ。)を保管してはならない。
2 技能実習関係者は、技能実習生の外出その他の私生活の自由を不当に制限してはならない。

最後に、↑の規定です。かつては、休日でも外出禁止とする受入企業があったそうです。逃亡防止や、いわゆる「知恵をつける」ことの防止なのでしょうか。今回の改正で、休日外出禁止を含め、私生活の自由を不当に制限することが禁止されました。

いかがでしょうか。受け入れ企業は、日本の労働法以上に厳しい監査を受けなければなりません。
しかし、裏を返せば、厳しい監査に通るということは、その受入企業がブラックではないことのお墨付きを得たという見方もできます。

ただ、以上の規定違反に対する制裁が気になる方も多いと思います。
「いくら規定があっても、規定違反に対する制裁が弱ければ意味ないのでは……」とお考えになる方も多いでしょう。

そこで、次回は、規定に対する制裁について、申し上げます。