静岡市清水区で法律事務所を経営している、弁護士の浅井裕貴です。
ここでは、特定調停(強制執行を止めつつ、借金の話し合いをする制度)についてお話します。

耳慣れない言葉かもしれませんが、強制執行前ならば、簡単に強制執行を止められる有意義な手続です。
万一に備えて、覚えておいてください。

〇特定調停

特定調停とは

特定調停とは、「個人・法人を問わず,このままでは返済を続けていくことが難しい方が,
債権者と返済方法などについて話し合って,生活や事業の建て直しを図るための手続として,
民事調停の特例として定められたもの」です(裁判所ウェブサイトより)。

要するに、借金の話し合いに特化した調停です。
基本的には、借金全額をどうやって返していくかの話し合いです。
相手方が承諾しないと成立しません。

特定調停のデメリット

①将来の利息も含んだ話し合いになりやすい

特定調停の場合は、申立てまでの利息はおろか、
将来の利息も付けた額を基準にした額からの交渉になることもあります。
(任意整理の場合には、将来の利息を求められることは稀です。
業者によっては、過去の利息も免除してくれることがあります。)

②特定調停成立後は強制執行が可能になる

また、いったん特定調停が成立すると、成立後に滞納した場合には、
裁判を経ずに強制執行が可能になってしまいます。

したがって、特定調停は、意外とデメリットが多いのです。

特定調停の大きなメリット

①強制執行が止まる可能性がある

ただ、1つだけ、大きなメリットがあります。
それは、特定調停の申立書が、相手方に届きさえすれば、
強制執行を止めるチャンスが生まれるということです(特定調停法7条1項本文)。

したがって、抵当権・根抵当権をつけられていたり、既に裁判で負けているなどして、
このままでは強制執行が避けられない場合には、特定調停を起こすメリットがあります。
特に、強制執行直前だと、相手方に再考を促すことができるでしょう。

なお、強制執行後でも止められる可能性はありますが、
担保を積まなければならい場合が多いようです。

相手方から、強制執行をちらつかされた場合には、特定調停をご検討ください。