民事IT裁判FAQ13~第1回口頭弁論期日はどうなる?~
Q 私は原告側の弁護士です。せっかくなので、IT裁判を希望しました。また、被告側にも弁護士がつき、IT裁判を希望してくれるようです。第1回口頭弁論期日はどうなるのでしょうか。
A 第1回口頭弁論期日が取り消されて、いきなりIT裁判(書面による準備手続または弁論準備手続)から始まることも多いようです。
【解説】
訴状を提出すると、裁判所が被告にも訴状を送ってくれます。原告がIT裁判を希望していたとしても、被告に訴状が送られる際、第1回口頭弁論期日を定めて、呼び出し状を送ります。IT裁判の期日を決める訳ではありません。訴状を送る段階では、被告に弁護士が就くか否かは不明なので、いきなりIT裁判の期日を定めることはできないからです。
その後、被告にも弁護士が就き、被告側弁護士がIT裁判を希望してくれた場合、第1回口頭弁論期日はどうなるのでしょうか。
少し前までは、第1回口頭弁論期日を開く裁判所が多かったようです。そして、原告は出頭のうえ、訴状陳述と共にIT裁判を希望する旨の陳述をしました。被告が出頭した場合は、答弁書と共に、IT裁判を希望する旨の陳述をしました。被告が出頭しない場合は、答弁書にIT裁判を希望する旨を記載して、擬制陳述をするか、書記官さんが第1回口頭弁論期日前に、被告に対しIT裁判を希望する旨の電話聴取をして録取書を作成していたようです。
ただ、現在は、原告・被告ともにIT裁判を希望することが分かれば、第1回口頭弁論期日は取り消して、いきなりIT裁判から始めるという運用をしている裁判所が増えてきていると聞きます。原告・被告ともにIT裁判を希望しているのであれば、わざわざ第1回口頭弁論期日を開くメリットが乏しいからです。第1回口頭弁論期日で、実質的な議論がなされないのが通例だからです。
ここで、印紙について興味を持たれた方がいらっしゃるかも知れません。
そうです。第1回口頭弁論期日終了までは、印紙が概ね半額返ってくるという、民事訴訟費用等に関する法律9条3項1号の解釈です。
民事訴訟費用等に関する法律9条
3 次の各号に掲げる申立てについてそれぞれ当該各号に定める事由が生じた場合においては、裁判所は、申立てにより、決定で、納められた手数料の額(第五条の規定により納めたものとみなされた額を除く。)から納めるべき手数料の額(同条の規定により納めたものとみなされた額を除くものとし、民事訴訟法第九条第一項に規定する合算が行われた場合における数個の請求の一に係る手数料にあつては、各請求の価額に応じて案分して得た額)の二分の一の額(その額が四千円に満たないときは、四千円)を控除した金額の金銭を還付しなければならない。
一 訴え若しくは控訴の提起又は民事訴訟法第四十七条第一項若しくは第五十二条第一項の規定若しくはこれらの規定の例による参加の申出 口頭弁論を経ない却下の裁判の確定又は最初にすべき口頭弁論の期日の終了前における取下げ
IT裁判となると、証人尋問の期日まで口頭弁論期日が開かれない可能性があります。逆にいえば、何度IT裁判を重ねても、口頭弁論期日が開かれたことにはなりません。したがって、何度IT裁判を重ねても、口頭弁論期日が開かれる前に取り下げれば、印紙は半額返ってくるのでしょうか?
これについては、内々で書記官さんに聞いたところ、あくまで私見であり非公式な回答という前提のうえで、「条文どおり、半額お返しすることになると思う。」との回答をいただきました。
もちろん、だからどうしたという話ではないと思います。ただ、知的好奇心として、興味を持たれる方が多いと思われますので、敢えて付記させていただきました。