口外禁止条項とは?破ったらどうなるか・サイン前に確かめる3点を弁護士が解説します

口外禁止条項とは、和解や示談で決めた内容を、第三者に話したりネットに書いたりしてはならないという条項です。何について口外を禁止するのかによって、受ける制約の重さは大きく変わります。破ったときにどうなるかも、違約金の定めがあるかどうかで変わります。この記事では、範囲の分かれ方と、違反したときの効果をご説明します。

口外禁止条項とは何か

決められた内容を、第三者に話したり、ネットで公開してはいけないという意味の条項です。

「口外」と表現しますが、当然、第三者への漏洩全部を含みます。たとえば、和解金額を「100万円でした」とSNSに書き込むことも、口外禁止条項違反です。「口にはしていない。SNSに書いただけだ」という言い訳は通りません。

条項そのものは、文字どおりの解釈で間違いありません。問題は、何を口外してはいけないのかという範囲です。

口外禁止の範囲は3つに分かれる

たとえば、Xさんが、Y社に対し、未払残業代を請求して、Y社がXさんに100万円を支払うという和解が成立しそうになったとします。この場合、想定される口外禁止条項は、次の3つに分かれます。

範囲口外してはいけないこと言い出すことが多い側
①和解内容和解金額が100万円であること。和解したこと自体は話してよいY社(会社)側
②和解したこと自体和解したという事実まで含めて話せないXさん側のこともある
③和解に至る経緯未払残業代があったことなど、事実関係まで話せないほとんどがY社(会社)側

①はよく見かける形です。もっとも、Xさんとしても、和解金額が周囲にばれると、給料の額を推測される恐れがあるとして、Xさん側から提案することもあるでしょう。

②は、Xさん以外にも残業代を請求している同僚がいる場合に、同僚から「Xさんは抜け駆けした」などと言われないよう、Xさん側から提案されることもあります。

③は、Y社側から提案されることがほとんどだと思いますが、稀には、Xさん側から提案することもあるかも知れません。

破ったらどうなるか

先に結論を申し上げます。違約金の定めがあるかどうかで、大きく変わります。

違約金の定めがある場合

違約金は、賠償額の予定と推定されます(民法420条3項)。賠償額の予定をした場合、実際にいくらの損害が生じたかを証明しなくても、定めた額を請求できます。

つまり、違約金の定めがあれば、請求する側の負担は軽くなります。裏を返せば、サインする側にとっては重い条項です。

違約金の定めがない場合

債務不履行として損害賠償を請求することになります(民法415条1項)。ただし、この場合は、いくらの損害が生じたかを証明しなければなりません。

口外されたことで、いくらの損害が生じたのか。これを金額で示すことは、簡単ではありません。

なお、口外の内容が名誉を傷つけるものであれば、別に不法行為として賠償を請求できる場合があります(民法709条・710条)。ただし、これは口外禁止条項があるかどうかとは別の話です。

そもそも違反を証明できるか

実務上、ここが最も難しい点です。

SNSへの書き込みのように、形に残るものであれば証明できます。しかし、人づてに広まった場合、結局、どこから広まったのかが分かりづらいことが多いです。「誰が話したのか」を示せなければ、違反を問うことはできません。

サインする前に確かめること

  • 範囲……上の①②③のどれにあたるか。和解したこと自体まで禁じられていないか
  • 違約金……違約金の定めがあるか。あるなら金額はいくらか
  • 例外……家族や税理士、弁護士に話すことまで禁じられていないか。「正当な理由がある場合を除き」といった例外が置かれているか
  • 相互かどうか……自分だけが負う義務になっていないか

一度サインすると、清算条項により、原則としてやり直しはできません。

よくあるご質問

SNSに書くのも口外にあたりますか

あたります。「口外」と書かれていても、第三者への漏洩全部を含みます。

家族に話すこともできないのですか

条項の書き方によります。例外が置かれていなければ、文言上は家族も第三者にあたります。サインする前に、例外の定めを確かめてください。

口外禁止条項を求められたら、断れますか

和解は当事者の合意ですので、断ること自体はできます。ただし、相手方が条項を和解の条件としている場合、断れば和解がまとまらないことがあります。範囲を狭める交渉のほうが、現実的な場合があります。

相手が口外禁止条項を破ったら、どうすればよいですか

まず、書き込みや記事など、形に残るものを保存してください。違反を問うには、誰が口外したかを示す必要があります。

要点の整理

  • 口外禁止条項そのものは、文言どおりの意味である
  • 重要なのは、①和解内容/②和解したこと自体/③和解に至る経緯のどれを禁じているか
  • 違約金の定めがあれば、損害額を証明しなくても請求できる(民法420条3項)
  • 違約金の定めがなければ、損害額の証明が必要で、金額を示すのは難しい(民法415条1項)
  • 人づてに広まった場合は、誰が口外したかを示せず、違反を問えないことがある

ちなみに、トレント(Torrent)案件でも、口外禁止条項の御相談をいただくことがあります。
やはり、トレントで何かをダウンロードしたということは、他人に知られたくないと思うからです。
弊事務所では、トレント案件で、口外禁止条項を挿入する交渉の成功事例があります。

静岡市・清水区周辺で、発信者情報開示請求や違法ダウンロードに関する通知・請求を受けた場合、事案によって取るべき対応や注意点は大きく異なります。

不要な対応や支払いを避けるためにも、不安がある場合は一度専門家にご相談ください。


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浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。