相続法が変わります6

保全処分として、預貯金を仮分割できます

【家事事件手続法200条】
3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第466条の5第l項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

1 ひとこと解説

改正前でも、仮分割の制度は存在しています(家事事件手続法200条2項)。
しかし、その要件は「急迫の危険を防止するため」と厳しかったのです。
そこで、預貯金債権については、「急迫の危険」がなくても、一定の必要性があれば、仮分割ができるようになりました。

2 例

Bさんは、Aさんと結婚していました。Bさんは専業主婦であり、Aさんの給料で生活していました。Aさんは自分の給与を全て銀行口座に預金していました。なお、Aさんは生命保険は入っていませんでした。ある日、Aさんは急死しました。Aさんの死亡を知った銀行は口座を凍結した。AさんにはCという子がいるが、遺産分割協議に非協力的です。

このような場合、Bさんは、遺産分割調停を申立てさえすれば、仮分割を受けて生活費分だけでもAさんの口座から払戻を受けられる可能性が出てくることになります。

3 注意点

あくまで保全処分なので、遺産分割調停の申立は必要です。