民事IT裁判FAQ5~どこからでもIT裁判に参加していいの?~

※民訴規則改正により、本ページで引用している条文も改正されました。しかし、結論的には余り変化はありません。
民訴規則改正後も、事前の確認は必要と考えます。詳しくはFAQ23をご確認ください。

Q IT裁判ということは、必要な機材を揃えたパソコンさえあれば、どこでIT裁判に参加しても良いということでしょうか?

A 原則としては、そのとおりです。ただ、依頼者や相手方のプライバシーが守られる場所であり、かつ、調書に記載されても差し支えない場所で参加する必要があります。

【解説】
やはり、IT裁判のメリットは、裁判所の建物に行かなくても良く、どこからでもIT裁判に参加できることです。
裁判所に行かないということは、移動時間分だけ、他の仕事ができます。たとえば、弊事務所は、静岡地裁まで、自家用車で往復1時間くらいかかります。IT裁判であれば、この1時間が浮くわけです。

また、仮に他の場所に居たとしても、裁判に参加できるという意味でもあります。
たとえば、何らかの事情で、東京にいたとしても、静岡の裁判に参加できます。

そして、法令上は、参加場所に制限はありません。
ただし、裁判所が出している「ウェブ会議等を行う際の留意事項」(日弁連会員専用ページに掲載)によると、「周辺環境がウェブ会議を実施するのに相応しくない場所(例えば、不特定多数の人が周囲に存在するような場所や通信環境が安定しない場所等)からはウェブ会議に参加しないでください。」とあります。

したがって、たとえ、JR東海がウェブ会議可としているからといって、「S Work車両」からIT裁判に参加することは避けた方が良いということになります。仮に、ヘッドセットをして、相手方や裁判官の声が漏れないとしても、自らの話し声については周囲に拡散することを防げないからです。

では、自宅からなら良いのでしょうか。法令上は問題ありませんし、自宅なら「不特定多数の人が周囲に存在する場所」ではありません。
ただし、一点注意が必要です。

それは、参加場所が調書に記載される可能性が高いということです。

民事訴訟規則 91条3項 第1項の方法による協議をし、かつ、裁判長等がその結果について裁判所書記官に記録をさせたときは、その記録に同項の方法による協議をした旨及び通話先の電話番号を記載させなければならない。この場合においては、通話先の電話番号に加えてその場所を記載させることができる。

「調書なんて、めったに閲覧・謄写されないから気にしていない。」とお考えかも知れません。しかし、和解調書も、同じ扱いです。
つまり、和解調書にも参加場所が記載されます。
和解調書は、通常、依頼者にも渡します。したがって、自分の依頼者はもちろん、相手方の依頼者にも参加場所が伝わるのです。

それでも、自分の事務所が記載されているのであれば、問題ないでしょう。弁護士は、自分の事務所がネットで公開されていますし、そもそも、訴状や答弁書でも、自分の事務所を記載しています。

しかし、自宅となると、話は違うとお考えの先生も多いと思います。
そのため、自宅からIT裁判に参加される場合には、調書にどのように記載されるのかを、事前に書記官さんに確認した方が良いです。

私が体験した範囲ですと、「静岡市○○区の代理人自宅」という形で、町名・番地名までは記載されないという形がほとんどでした。
「それでも、相手方に知られたくない。」とお考えになる先生の方が多いと思いますので、事前のご確認をお勧めいたします。