民事IT裁判FAQ23~改正後も調書記載に要注意~

Q 民訴規則改正により、Web会議をしている場所が調書に記載される可能性は減ったと考えられるでしょうか。

A 条文上はそう読めます。しかし、解釈によっては、web会議をしている場所が調書に記載される可能性はあります。民訴規則改正後も、調書にどのように記載されるかは、事前の確認が必要です。

【解説】

確かに、条文上は、電話番号または場所を調書に記載しなければならないという文言が削除されました。
そして、以下のような条文になりました。

民訴規則88条2項 裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法によって弁論準備手続の期日における手続を行うときは、裁判所又は受命裁判官は、次に掲げる事項を確認しなければならない。
一 通話者
二 通話者の所在する場所の状況が当該方法によって手続を実施するために適切なものであること。

「場所」や「電話番号」といった具体的記載は消え、「手続を実施するために適切なものであること。」という、かなり抽象的な文言になりました。

これだけ読むと、調書には「通話者から状況を聞き取ったところ、手続を実施するために適切な状況にあることを確認した。」とでも記載してくれそうな気がします。

しかし、解説書(法曹時報第74巻第12号)によると、「場所の属性も調書に併せて記載することが求められる。」とあります。
つまり、何も書記官さんに言わないと、「通話者が静岡市○○区の代理人自宅にいることを確認した。」等という記載をされる可能性があるというわけです。

もっとも、当該解説書には、「弁護士が自宅から参加していることを調書上明らかにすることを望まない場合には『被告代理人の執務室』などの記載方法も考えうる」とあります。つまり、ぼかす記載も、違法ではないということです。

したがって、民訴規則が改正されたとはいえ、事務所以外からweb会議に参加する場合には、これまでどおり、事前に、書記官さんと協議しておく必要があるとうことになるのです。