「意図していなくても」依拠性あり? 生成AIの著作権リスクと「AIの学習」の関係
お待たせしました。依拠性の話です。
前回申し上げたとおり、①類似性があり、②依拠性があれば、私的複製などの例外規定に当てはまらない限り、著作権侵害になると申し上げました。
そして、①類似性とは、文字どおり似ていることを指します。法的な用語でいうと、本質的な特徴を感得できることを指します。
私が判例を見ている限りでは、少なくとも、「全体的に見て似ている。」と思えない限り、類似性が認められることは困難です。
ちなみに、私が「全体的に見て似ている」と思っても、類似性が認められていない判例もいくつかありました。
なお、類似性が認められなければ、絶対に著作権侵害に当たらないという意味ではありません。
翻案権侵害など、類似していなくても、著作権侵害に当たる場合はあります。ご注意ください。
あくまで、本稿では、まず①類似性があった場合に、著作権侵害が成立するのはどのような場合かという観点でお話しします。
では、②依拠性とは何でしょうか。
依拠性とは、「既存の著作物に接して、それを自己の作品の中に用いること」を言います。
そして、確かに、「Ⅰ 生成AI利用者が、既存著作物を認識しつつ、当該既存著作物と同一・類似のAI生成物を生成する意図のもとにAIを利用している場合」には、依拠性ありとされます。
「ドラえもんが当社の製品を持った画像を生成してください。」等とプロンプトに著作物を指定した場合や、一般的な生成AIにドラえもんの画像をアップロードし、「アップロードした画像が、当社の製品を持っている画像を生成してください。」等とプロンプトに打ち込んだ場合も依拠性ありとされます。
これらには②依拠性があって、著作権侵害になることは受け入れられると思います。
問題なのは、依拠性の例は、これだけではないということです。
すなわち、
Ⅱ AIが既存著作物を学習しており、かつ
Ⅲ 学習に用いられた著作物の創作的表現が、生成・ 利用段階において出力される状態になっていないと法的に評価できない場合、
には、依拠性ありとされる可能性が高いのです。
ただ、Ⅱに関し、一般的な生成AIで、AIが既存著作物を学習していないというのは、なかなか想定しがたいです。
たとえば、chatGPTやGeminiが、ドラえもんの画像を学習していないとは考え難いでしょう。
また、Ⅲについては、生成AIが、著作権侵害をするような画像の生成を断る仕組みになっていることを立証することが考えられます。
現に、一般的な生成AIには、そのような仕組みがあるともきいております。
ただ、実際に、図らずもドラえもんに類似した画像が生成されてしまった場合に、「著作物の創作的表現が、生成・ 利用段階において出力される状態になっていない」という主張が通るのかは、微妙なところです。
「出力される状態ではないか」と反論されてしまう可能性が高いと思います。
ということで、皆様が想像する「依拠性」は上記のⅠだけだったかも知れません。
しかし、Ⅱ+Ⅲの場合も②依拠性ありとされる可能性が高いです。
つまり、一般的な生成AIを使った場合、仮に①類似性が認められると、Ⅱ+Ⅲもあっさり認められ、②依拠性ありとして違法になってしまう可能性が高いというわけです。
ということで、一般的な生成AIで画像生成をし、その画像を公開したり、ビジネスで使いたいと考える場合には、画像検索をして類似する画像が無いかを確認した方が良いのです。


