児童虐待対応の大枠2~一時保護を争う方法~

さて、今日は、一時保護の判断に誤りがあった場合についてお話します。

一時保護は、行政処分の一種です。したがって、一時保護をされた側は、行政不服審査法に基づき、審査請求ができます。そして、審査請求の結果にも不満だった場合、一時保護の取消訴訟を提起することも可能です。
この内容は、一時保護を伝える書面にも記載されております。

ただ、今では、2カ月を超える一時保護の際、家庭裁判所の承認が必要になっています(児童福祉法33条5項)。
家裁は、承認するか否かを検討する際、親権者等の意見を聞かなければなりません(家事事件手続法236条1項、235条)。
大抵の場合、一時保護を争う方は親権者だと思われます。
したがって、家裁の承認の際に、反対の意見を述べるという形で、実質的に、一時保護を争うこともできます。

以上は、あくまで理論上の話です。

というのも、児相は、必ずしも親権者と児童を永久に引き離そうとするわけではありません。大抵の場合、「今は引き離すべきであるが、将来的にはお返ししたい。」と考えています。つまり、目指すところは、「児童を親権者のもとに返す」という点で、親権者も児相も同じである場合も珍しくないのです。

そのため、児相と敵対することが必ずしも良い結果を生むとは限りません。むしろ、児相に対し、穏健な態度で接近し、「どのような理由で一時保護を決めたのか。どうすれば、一時保護を解除してもらえるか。」という内容を聞き出すことも有益な場合があります。
もし、児相が理由を教えてくれた場合、その理由に心当たりがあれば改め、心当たりがなければ、心当たりがない旨を証拠をもって説得することによって、一時保護が解除されることがあります。
私も、一時保護については、法的手段を敢えて採らず、児相に接近し、児相の真意を聞き出すことによって、一時保護から2カ月経たずに一時保護解除をするということが多いです。

児童を一時保護された方からすれば、児相は不俱戴天の仇と思えるかも知れません。しかし、敢えて穏当に接近することで、より早く一時保護が解除できる場合もあるということは、ご承知おきください。