ハンコについて本気出して考えてみた8~そのハンコ要ります?~

繰り返しとなりますが、ハンコの効果は「この書類は、本人が作ったのだろう」と思わせるところにあります。

書類は、本人が生きていなければ作れません。つまり、死者のハンコが捺されていても、「この書類は本人が作った」ことはあり得えないため、ハンコの効果は生じません。したがって、死者のハンコは、無意味なのです。

ここまで書くと、「当たり前ではないか」と思って下さる方が多いと思います。

しかし、私が法律相談をお受けすると、たまに以下のような話を伺うことがあります。例によって、守秘義務の関係で、事案を抽象化しております。

①「父親が死亡したので、携帯電話の解約をしようとしました。すると、『お父様の印鑑を解約書類に捺してください。』と言われました。本当に、父親の印鑑を捺さなければならないのでしょうか。」

②「母親が死亡しました。母親は、とあるスーパーのポイントカードを持っていました。スーパーの担当者に、ポイントを私に移せないか確認したところ、『お母様とあなた様のハンコがあれば可能です。』と言われました。腑に落ちないものを感じましたが、言われたとおりにハンコを捺しました。」

私からすれば、①②も、法的には無意味なハンコです。いや、死亡後にハンコが捺されている書類を作り出そうとしてしまっているという意味では、無意味どころか、余計な紛争を招くリスクを生じさせていると言っても過言ではありません。

おそらく、①や②を発言した方は、「マニュアルどおりだから問題ない。」とか、「とりあえずハンコさえ捺されていれば、自分に責任はない。」とでも思っているのかも知れません。しかし、法的に無意味なハンコを求めてしまった以上、余計な紛争に巻き込まれる可能性が出てくるという訳です。

また、私の経験ですと、成年被後見人の方のハンコを求める方が時々いらっしゃいます。
しかし、成年被後見人は、例外的な場合を除き、法的な書類は作れません。つまり、成年被後見人の方のハンコもやはり無意味なのです。でも、やはりマニュアルなのか、「成年被後見人の方のハンコが必要です。」などと言われることがあります。

ハンコを、何か免罪符といいましょうか、黄門様の印籠といいましょうか、万能であるかのように誤解している方が見受けられます。

確かに、ハンコの効力は強いですが、「この書類は、本人が作ったのだろう」以上の効力はないのです。強さにも限界があります。
本人が書類を作れない状態でハンコを捺しても無意味どころか有害なのです。