弊所FAQ3~逮捕は罰ではない~

不定期に、私が良くいただく質問に対しお答えしていきます。
なお、あくまで私個人の意見・見解であり、弁護士会としての意見・見解ではありませんので、ご了承ください。

Q なぜ、悪いことをした人でも、逮捕されないことがあるのですか?

A そもそも、悪いことをしたかどうかを決めるのは、刑事裁判の裁判官です。警察官や検察官ではありません。また、逮捕は罰ではなく、明らかに必要性がないという場合には行えません。

【解説】

まず、統計からみてみましょう。令和5年度版の犯罪白書第2編の、39ページ(9枚目)をご覧ください。たとえば、重大な犯罪である殺人ですら、逮捕されないことがあるということがお分かりいただけると思います。つまり、悪いことしたか否かと、逮捕とは、それほど関係がないともいえます。

では、通常逮捕はどのような場合にできるのでしょうか。刑事訴訟法199条1項は、「被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるとき」と定めています。

刑事訴訟法第百九十九条 検察官、検察事務官又は司法警察職員は、被疑者が罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由があるときは、裁判官のあらかじめ発する逮捕状により、これを逮捕することができる。

ただし、刑事訴訟規則143条の3では、明らかに逮捕の必要性がない場合には、逮捕が認められないとています。

刑事訴訟規則百四十三条の三 逮捕状の請求を受けた裁判官は、逮捕の理由があると認める場合においても、被疑者の年齢及び境遇並びに犯罪の軽重及び態様その他諸般の事情に照らし、被疑者が逃亡する虞がなく、かつ、罪証を隠滅する虞がない明らかに逮捕の必要がないと認めるときは、逮捕状の請求を却下しなければならない。

逃亡の恐れ(「虞」は「恐れ」とほぼ同義です。)や証拠隠滅(罪証隠滅)の恐れがない場合が、明らかに逮捕の必要性がない場合の一例として挙げられています。

たとえば、住所不定の方だと「逃亡の恐れ」ありとされることが多いでしょう。
しかし、仕事がある方だと「逃亡の恐れ」ありとされる確率は低いといえます。

また、違法薬物所持事案ですと、違法薬物をトイレに流すなど、直ぐに証拠隠滅を図れる可能性があるので「証拠隠滅の恐れ」ありとされる可能性が高くなります。
しかし、交通事故事案だと、事故車を処分することは難しいので、「証拠隠滅の恐れ」なしとされる可能性が高くなります。

したがって、住所不定の方の覚せい剤所持というような、目立った被害者がいない事件でも逮捕されることがある反面、有職者の起こした交通死亡事件では逮捕されないこともあるわけです。

以上のとおり、逮捕は罰ではないというお話でした。