ネットの投稿は、どこからが名誉毀損?意見や感想なら書いてよい?弁護士が分かりやすく解説します

Q インターネットの掲示板やSNSで、自分について書かれた投稿を見つけました。どこからが「名誉毀損」になるのでしょうか。逆に、私が誰かについて感想や批判を書く場合、意見や感想の形であれば名誉毀損にはならないと聞きましたが、本当でしょうか。

A 名誉毀損は、不特定または多数の人が知ることのできる場で、特定の人の社会的評価を下げる事実(事柄)が示された場合に問題となります。書かれた内容が真実であっても成立しうる一方で、公共性・公益目的・真実性がそろえば責任を負わないという例外もあります。また、「意見や感想の形にすれば安全」とはいえません。裁判所は、表現の形式だけでなく、一般の読者の受け取り方を基準に判断しているためです。

【解説】

1 法律でいう「名誉」は、世間からの評価のことです

法律でいう名誉毀損の「名誉」とは、その人が世の中からどのように評価されているか(社会的評価)を指します。書かれた本人が不快に思ったかどうかという気持ちの問題(名誉感情)とは、法律上は区別して考えられています。

そして、ある投稿が社会的評価を下げるものかどうかは、書いた人のつもりではなく、「一般の読者の普通の注意と読み方」を基準に判断されます。この基準は、SNSの投稿についても同じように用いられています(東京高等裁判所令和4年10月19日判決・令和4年(ネ)第10019号。裁判所ウェブサイト 判決文PDF)。

2 民事と刑事の両方に規定があります

民事では、名誉毀損は不法行為にあたり、慰謝料などの損害賠償の対象になります(民法709条、710条)。また、裁判所は、損害賠償に代えて、またはこれとともに、名誉を回復するのに適当な処分(謝罪広告など)を命じることができるとされています(民法723条、ただし、謝罪広告のハードルは高いです。)。

刑事では、刑法230条1項が「公然と事実を摘示し、人の名誉を毀損した者は、その事実の有無にかかわらず、三年以下の拘禁刑又は五十万円以下の罰金に処する」と定めています。名誉毀損罪は告訴がなければ起訴できない親告罪です(刑法232条1項)。

ここで注目していただきたいのが、条文の「その事実の有無にかかわらず」という部分です。書いた内容が真実であったとしても、それだけでは名誉毀損にならないとはいえないのです。

3 問題になるのは、主に三つの点です

(1)公然性 不特定または多数の人が知ることのできる状態かどうかです。誰でも読める掲示板やSNSへの投稿は、通常これにあたります。

(2)誰のことか分かるか 実名でなくても、投稿の前後の記載や他の情報と合わせて読めば特定の人を指していると分かる場合には、問題となり得ます。

(3)社会的評価を下げる内容か 前記1の基準で判断されます。

4 「事実を示した場合」と「意見・論評の場合」で、責任を免れる条件が違います

まず、その表現が「事実の摘示」なのか「意見ないし論評の表明」なのかが区別されます。最高裁判所は、証拠などによってその存否を決めることが可能な、他人に関する特定の事項を主張するものと理解されるときは事実の摘示にあたるとしています(最高裁判所平成16年7月15日判決・民集58巻5号1615頁)。同判決は、法的な見解の表明は事実の摘示ではなく意見ないし論評の表明の範囲に属する、とも述べています。

事実を示した場合は、①公共の利害に関する事実に係り、②目的が専ら公益を図ることにあり、③示された事実が重要な部分について真実であると証明されたときは、責任を問われません(刑法230条の2第1項)。真実であると証明できなかった場合でも、真実と信じるについて相当の理由があったときは、故意・過失がないとされています。

意見ないし論評の場合は、①公共の利害に関する事実に係り、②目的が専ら公益を図ることにあり、③その意見・論評の前提としている事実が重要な部分について真実であると証明されたときは、人身攻撃に及ぶなど意見ないし論評としての域を逸脱したものでない限り、違法性を欠くとされています(最高裁判所平成9年9月9日判決・民集51巻8号3804頁。前記の平成16年判決も同じ枠組みを示しています)。

つまり、「〜だと思う」「〜ではないか」と書き換えれば免責されるという単純な話ではありません。前提となる事実が真実であること、そして表現が論評の域を逸脱していないことが必要とされているためです。

5 事実を示さない悪口は、別の問題になります

具体的な事実を示さずに人をののしる表現は、名誉毀損罪ではなく侮辱罪の問題となります。刑法231条は「事実を摘示しなくても、公然と人を侮辱した者は、一年以下の拘禁刑若しくは三十万円以下の罰金又は拘留若しくは科料に処する」と定めています。この法定刑は、令和4年の改正で引き上げられたものです(法務省「侮辱罪の法定刑の引上げについて」資料。令和4年7月7日施行)。

民事では、社会的評価の低下がはっきりしない場合でも、名誉感情を害されたとして損害賠償が問題となることがあります。

6 時間の制限があります

損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。投稿者が誰か分からないうちは3年の期間は進みませんが、通信記録(ログ)の保存期間の問題がありますので、早めのご相談をお勧めします。

7 最後に

名誉毀損にあたるかどうかは、投稿の文言、前後の文脈、書かれた人の立場、その投稿がされた場の性質など、事案ごとの事情を踏まえて判断されます。同じような言葉でも結論が変わることがありますので、実際の投稿を拝見したうえでの検討が必要です。書かれてお困りの方も、ご自身の投稿が問題にならないか心配な方も、投稿ページを印刷したものをお持ちいただき、ご相談ください。

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※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。