調停の呼出状が届いた。行かないとどうなる?欠席の重さは事件の種類で変わります

Q 家庭裁判所から封筒が届きました。中に入っていたのは、調停の申立書の写しと、期日を知らせる呼出状です。指定された日は平日の昼間で、仕事を休まなければ行けません。相手方の言い分にも納得がいきません。調停は話し合いの手続だと聞いていますので、私が行かなければ話し合いは成立せず、それで終わるのではないかとも思うのですが、いかがでしょうか。

A 事件の種類によって、まったく違います。貸金などの民事調停や、離婚そのものを求める調停であれば、まとまらなければその手続はそこで終わります。ただし、遺産の分割、婚姻費用の分担、養育費、財産の分与、親権者の指定といった調停は、まとまらなければ自動的に審判に移り、裁判所が結論を決めます。あなたが何も述べないままであれば、あなたの事情が入らない状態で決まることになります。

まず、呼出状を無視できるのか

家事事件手続法51条2項は、呼出しを受けた事件の関係人は期日に出頭しなければならない、と定めています。ただし書で、やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができるとされています。そして同条3項は、正当な理由なく出頭しないときは五万円以下の過料に処する、と定めています。この規定は、同法258条1項により、家事調停の手続の期日についても準用されます。

簡易裁判所の民事調停についても、民事調停法34条が、正当な事由がなく出頭しないときは五万円以下の過料に処すると定めています。

もっとも、欠席で本当に困るのは、過料ではありません。というのも、私が知る限り、過料の制裁が下ることは極めて稀だからです。しかし、過料よりも困るのは、この後に述べる手続の流れのほうです。

訴訟とは、仕組みが違います

訴状が届いた場合、答弁書も出さず期日にも出頭しなければ、訴状に書かれた事実を争わなかったものとして扱われます(民事訴訟法159条1項・3項)。この点は訴状が届いたら、何日以内に何をすればよい?でご説明しました。

調停には、これに当たる仕組みがありません。調停は合意を目指す手続ですので、欠席したからといって、相手方の言い分を認めたことにはなりません。この点は、訴訟と大きく異なります。

ただし、それで安心してよいかというと、そうではありません。

まとまらなかった後が、事件の種類で分かれます

家事事件手続法272条1項は、合意が成立する見込みがない場合などには、調停が成立しないものとして事件を終了させることができる、と定めています。問題は、その後です。

① 自動的に審判へ移るもの(別表第二の事項)

同条4項は、別表第二に掲げる事項についての調停事件が終了した場合には、家事調停の申立ての時に、その事項についての家事審判の申立てがあったものとみなす、と定めています。つまり、調停が不成立になると、あらためて誰かが申し立てなくても、そのまま審判の手続に移ります。

別表第二に掲げられている事項のうち、ご相談の多いものは次のとおりです。

  • 婚姻費用の分担に関する処分(二の項)
  • 子の監護に関する処分(三の項)……養育費や面会交流がこれに含まれます
  • 財産の分与に関する処分(四の項)
  • 親権者の指定又は変更(八の項)
  • 遺産の分割(十二の項)
  • 寄与分を定める処分(十四の項)

審判では、裁判所が手元にある資料に基づいて判断します。あなたが出席もせず、書面も出していなければ、あなたの事情は資料に含まれません。欠席が重くのしかかるのは、この類型です。

② そこで終わるもの(離婚そのものなど)

離婚そのものを求める調停は、別表第二に掲げられていません。したがって、不成立になっても自動的に審判へ移ることはなく、その手続はそこで終わります。

ただし、終わりではありません。家事事件手続法257条1項は、調停を行うことができる事件について訴えを提起しようとする者は、まず家庭裁判所に家事調停の申立てをしなければならないと定めています(調停前置主義)。相手方にとって、調停が不成立になったことは、離婚訴訟を起こすための条件が整ったことを意味します。

なお、同条3項は、不成立の通知を受けた日から二週間以内に訴えを提起したときは、調停の申立ての時に訴えの提起があったものとみなす、と定めています。

③ 民事調停(貸金、交通事故、近隣トラブルなど)

簡易裁判所の民事調停も、まとまらなければそこで終わります。相手方が訴訟を起こすかどうかは、相手方の判断によります。

まとまった場合は、後から覆せません

家事事件手続法268条1項は、調停において合意が成立し、これを調書に記載したときは、その記載は確定判決(別表第二に掲げる事項については確定した審判)と同一の効力を有する、と定めています。

民事調停法16条も、調書の記載は裁判上の和解と同一の効力を有すると定めています。

「話し合いだから、後から考え直せる」という手続ではありません。その場の雰囲気で応じてしまうと、取り返しがつきません。出席することと、その場で応じることは、別の判断です。

同封されている書面にも、期限があります

呼出状のほかに、事情説明書や、進行に関する照会回答書といった用紙が同封されていることがあります。これらは第1回の期日より前に提出を求められるのが通例です。

これらは、あなたが裁判所へ最初に出す書面です。ここに書いた内容が、その後の話し合いの出発点になります。深く考えずに書いた一文が、後から述べたい主張と食い違うことがあります。書く前に方針を決めてください。

なお、同封される書類の名称や様式、期日の運用は、裁判所によって異なることがあります。お手元の書面の記載をご確認ください。

よくあるご質問

仕事があって、どうしても行けません。

まず家庭裁判所(または簡易裁判所)に連絡してください。期日の変更を相談できる場合があります。また、家事事件手続法51条2項ただし書は、やむを得ない事由があるときは代理人を出頭させることができると定めています。弁護士に依頼すれば、代理人が出頭する形をとることもできます。

1回欠席してしまいました。もう手遅れですか。

1回の欠席で直ちに手続が終わるとは限りません。次回から出席して意見を述べることはできます。ただし、欠席が続けば、合意の見込みがないと判断される方向に働きます。まずは裁判所に連絡し、次回の期日をご確認ください。

相手と顔を合わせたくありません。

調停は、当事者が交互に調停室に入り、調停委員を介して話す方式で進められるのが一般的です。待合室も分かれています。事情があれば、到着時間をずらすなどの配慮を求めることもできますので、事前に裁判所へお伝えください。
また、下記のとおり、オンラインで調停に参加できることもあります。

遠方の裁判所から届きました。

電話会議やウェブ会議による参加が認められる場合があります。運用は裁判所によって異なりますので、まず可否をご確認ください。

要点の整理

  1. 正当な理由なく出頭しない場合、五万円以下の過料の定めがある(家事事件手続法51条3項・258条1項、民事調停法34条)。
  2. 調停には自白の擬制がない。欠席しても、相手方の言い分を認めたことにはならない。
  3. ただし別表第二の事項(遺産の分割、婚姻費用の分担、養育費、財産の分与、親権者の指定など)は、不成立で自動的に審判へ移る(同272条4項)。
  4. 離婚そのものや民事調停は、不成立でその手続は終わる。ただし調停前置の条件は満たされる(同257条1項)。
  5. 調停がまとまれば、確定判決または裁判上の和解と同一の効力(同268条1項、民事調停法16条)。後から覆せない。
  6. 同封の事情説明書等は、期日より前に提出を求められる。書く前に方針を決める。

※本記事の条文は、2026年9月16日時点のものです。

遺産分割調停の呼出状が届いた方へ

遺産の分割は、上の①に当たります。不成立になれば、そのまま審判に移ります。申立てを受けた側(相手方)の方向けに、第1回期日までに何を決めるべきかをまとめた案内を別に設けていますので、そちらをご覧ください。

遺産分割調停の呼出状が届いた方へ|定額初動レビュー

※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

裁判所から調停の呼出状が届いた方へ:第1回期日までに

出るか出ないか、出るとして何を述べるか。事件の種類によって、欠席の重さは変わります。呼出状と申立書の写し、同封の用紙を一式お持ちいただければ、あなたの事件がどの類型に当たるかをご説明します。

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浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。