発信者情報開示請求の「意見照会書」が届きました。どう対応すればよいですか?弁護士が分かりやすく解説します

Q 契約しているプロバイダ(携帯電話会社)から、「発信者情報開示に係る意見照会書」という書面が届きました。どうやら、私がインターネットの掲示板に書き込んだ投稿について、書き込まれた方から情報の開示を求められているようです。無視してもよいのでしょうか。回答する場合、どう書けばよいのでしょうか。

A 無視することはお勧めできません。意見照会は、法律でプロバイダに義務づけられた手続であり、発信者本人が言い分を述べることのできる、事実上最初で最後に近い機会です。回答するかどうか、どう回答するかによって、その後の展開が変わることがあります。回答期限は2週間程度と短いことが多いので、書面が届いたら早めに弁護士にご相談ください。

【解説】

1 意見照会は、法律で決まっている手続です

インターネット上の書き込みで権利を侵害されたと主張する人は、プロバイダなどに対して、発信者の氏名・住所などの開示を請求することができます(特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律〔情報流通プラットフォーム対処法。旧「プロバイダ責任制限法」〕5条1項)。この法律は、令和6年の改正で名称が変わり、2025年(令和7年)4月1日に施行されています(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応」解説ページ)。

そして、同法6条1項は、開示請求を受けたプロバイダに対し、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴かなければならないと定めています。しかも、「開示の請求に応じるべきでない旨の意見である場合には、その理由を含む」とされています。つまり、「反対です」とだけ書くのではなく、なぜ反対なのかを述べることが法律上予定されているのです。

お手元に届いた意見照会書は、この規定に基づくものです。プロバイダが勝手に送っているわけでも、あなたを問い詰めるために送っているわけでもありません。

2 意見照会書は、二段階で届くことがあります

インターネットの書き込みから発信者本人にたどり着くまでには、通常、二つの段階があります。

(1)サイト運営者・SNS運営者への請求 まず、投稿が掲載されているサイトの運営者に対し、投稿時のIPアドレスなどの開示が求められます。サイト運営者から意見照会が来ることもあります。

(2)接続プロバイダへの請求 次に、そのIPアドレスを割り当てていた接続プロバイダ(インターネット接続業者や携帯電話会社)に対し、契約者の氏名・住所などの開示が求められます。

接続プロバイダから届いた意見照会書は、特に重要です。ここで開示されると、あなたの氏名・住所が相手方に伝わることになるからです。

3 回答しないとどうなるのでしょうか

回答期限は、意見照会書に書かれています。運用上、2週間程度とされることが多く、決して長くはありません。

回答しなかった場合、プロバイダは「発信者から反対の意見はなかった」という前提で、開示するかどうかを自ら判断することになります。回答しないことは、開示を防ぐ方向には働きません。むしろ、あなたにしか分からない事情(投稿の前後の経緯、書き込みの意味、そもそも自分は書いていないなど)を伝える機会を失うことになります。

なお、期限内の回答が難しい事情があるときは、その旨をプロバイダに連絡し、期限の相談をすることも考えられます。

4 「開示に同意する」と回答した場合

同意すると回答すれば、通常、氏名・住所などが相手方に開示されます。その後は、相手方から損害賠償を求める通知が届いたり、訴訟を起こされたりすることが想定されます。名誉毀損などの不法行為が認められれば、慰謝料などの賠償責任を負うことになります(民法709条、710条)。

早期に謝罪して解決したいというお考えであれば、同意という選択もあり得ます。ただしm同意する場合でも、事前に弁護士に見通しを確認しておくことをお勧めします。

5 「開示に同意しない」と回答する場合

同意しないと回答する場合は、前記1のとおり、その理由を書くことが予定されています。理由としては、たとえば次のようなものが考えられます。

・投稿が権利侵害にあたらない 書かれた内容が公共の利害に関する事実で、目的が公益を図ることにあり、内容が真実であるといえる場合などです。また、事実の摘示ではなく意見・論評の表明にとどまる場合も、一定の要件のもとで違法性が否定されます(この点は、当サイトの別記事で詳しく説明しています)。

・投稿したのは自分ではない 家族や職場での共用、無線LANの利用状況など、契約者と発信者が一致しない事情がある場合です。

・そもそも特定されていない 投稿が誰のことを指しているのか、一般の読者には分からない場合です。

ここで注意していただきたいのは、同意しないと回答しても、プロバイダが開示しないと決まるわけではないということです。開示するかどうかを判断するのはプロバイダです。もっとも、同法6条4項は、開示請求に応じなかったことによる損害について、プロバイダは故意または重大な過失がなければ賠償責任を負わないと定めており、プロバイダが慎重な判断をする一因になっています。

6 回答書に書かない方がよいこともあります

意見照会書には自由記載欄が設けられていることが多いのですが、感情的な反論や、聞かれていない事情まで詳しく書くことは、お勧めできません。回答書の内容が、その後の裁判手続で証拠として提出される可能性があるからです。

同様に、相手方に直接連絡を取ったり、投稿を慌てて削除したりすることも避けてください。証拠隠滅と受け取られ、かえって不利に働くおそれがあります。

7 最後に

意見照会書が届くと、多くの方が強い不安を感じられます。もっとも、投稿の内容によっては、法的に問題がないと判断できる場合もありますし、逆に、早めに対応した方がよい場合もあります。結論は、実際の投稿と書面を拝見してみないと分かりません。

意見照会書、開示請求書、そして問題とされている投稿を印刷したものをお持ちいただければ、対応の方向性についてご説明できます。期限が短い手続ですので、届いたらできるだけ早くご相談ください。

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※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。