発信者情報の開示請求をされました。これからどうなりますか|弁護士が流れと期限を解説します

プロバイダから書面が届き、ご自分の投稿について開示請求がされていると知って、この記事にたどり着かれた方が多いと思われます。何がどこまで進んでいるのか、いつまでに何をすればよいのか、そのまま放っておくとどうなるのか。この記事では、開示請求をされた側から見た手続の流れと、期限のある場面を、条文に沿ってご説明します。

なお、本記事でいう「法」とは、特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律(平成13年法律第137号)を指します。かつて「プロバイダ責任制限法」と呼ばれていた法律です。今は、情プラ法(情報流通プラットフォーム対処法)と呼ばれます。

書面が届いた段階で、何が起きているのか

先に結論を申し上げます。意見照会書が届いた段階では、まだあなたの氏名や住所は相手方に渡っていません。

プロバイダは、開示請求を受けたとき、発信者と連絡することができない場合などを除き、開示に応じるかどうかについて発信者の意見を聴かなければならないと定められています(法6条1項)。意見照会書は、この手続のために送られるものです。

つまり、意見照会書が届いたということは、相手方があなたの契約者情報の開示を求めており、プロバイダがあなたの言い分を尋ねている段階だということです。

相手方が取り得る二つの道すじ

開示を求める側には、大きく二つの道すじがあります。どちらの道すじに乗っているかで、その後の進み方が変わります。次の表は、この二つを比べたものです。

比べる点任意の開示請求(法5条)発信者情報開示命令(法8条)
判断する者プロバイダ裁判所
手続の性質裁判外の請求裁判所の手続
発信者の関与意見照会への回答(法6条1項)意見照会への回答のほか、裁判所の手続の中でも争い得る
不服の申立て異議の訴え(法14条1項)

開示命令の手続では、裁判所が、他のプロバイダへ情報を渡すよう命じる提供命令(法15条)や、記録を消さないよう命じる消去禁止命令(法16条)を出すことがあります。

いつまでに何をする必要があるか

意見照会書の回答期限

意見照会への回答期限は、法律には定められていません。法6条1項は、プロバイダに意見を聴く義務を課しているだけで、発信者が何日以内に答えるべきかまでは定めていないからです。

したがって、期限は各プロバイダが書面の中で定めています。お手元の書面に書かれた日付をご確認ください。

実務上、回答期限は、1~2週間程度とされることが多いです。

回答しなかった場合

回答をしないこと自体に、法律上の罰則はありません。ただし、回答しなければ、あなたの言い分は手続に現れません。プロバイダは、あなたの反論を知らないまま、開示に応じるかどうかを判断することになります。

開示命令の決定が出た場合

ここが、最も期限の厳しい場面です。開示命令の申立てについての決定に不服がある当事者は、決定の告知を受けた日から1か月の不変期間内に、異議の訴えを提起することができます(法14条1項)。ただし、ここでいう当事者は、プロバイダであって、あなたではありません。つまり、あなたが、異議の訴えを提起できるわけではないのです。

この期間内に訴えが提起されなかったときは、その決定は確定判決と同一の効力を有します(法14条5項)。「不変期間」ですので、延ばすことは原則としてできません。

開示された後はどうなるか

開示がされると、相手方はあなたの氏名や住所を知ることになります。その後は、損害賠償の請求や、刑事の手続へ進むことがあります。

もっとも、開示を受けた者には義務があります。発信者情報の開示を受けた者は、その情報をみだりに用いて、不当に発信者の名誉または生活の平穏を害する行為をしてはならないと定められています(法7条)。開示された情報をインターネット上にさらすような行為は、この規定に触れる可能性があります。

よくあるご質問

開示請求をされたら、もう特定されているのですか

意見照会の段階では、まだ相手方にあなたの情報は渡っていません。プロバイダはあなたが誰かを把握していますが、相手方に伝えるかどうかはこれから決まります。

「開示に同意しない」と答えれば、開示されませんか

いいえ。意見照会は、あなたの同意を得るための手続ではありません。プロバイダが判断するための資料を集める手続です。同意しない旨を述べても、開示されることはあります。また、相手方が裁判所の手続に移れば、判断するのは裁判所です。

投稿を消せば、手続は止まりますか

止まりません。開示請求は、すでに行われた投稿について過去の記録をたどる手続です。投稿を消しても、相手方が保存した記録は残ります。

意見照会書を無視するとどうなりますか

罰則はありませんが、あなたの言い分が手続に現れないまま進みます。次の段階で争おうとしても、早い段階で述べておけば済んだ主張を、後から持ち出すことになります。

弁護士に相談するのは、どの時点がよいですか

意見照会書が届いた時点です。回答の内容が、その後の交渉の出発点になるためです。

要点の整理

  • 意見照会書が届いた段階では、まだ相手方に情報は渡っていない(法6条1項)
  • 回答期限は法律にはなく、プロバイダが書面で定めている
  • 「同意しない」と答えても、開示されることはある
  • 開示命令の決定に不服があるときは、告知を受けた日から1か月の不変期間内に異議の訴えを提起する(法14条1項)
  • 開示を受けた者にも、情報をみだりに用いてはならない義務がある(法7条)

お手元の書面に書かれた期限を過ぎる前に、ご相談ください。書面をお持ちいただければ、どの段階にあるかをその場でご説明できます。

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※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。