【判例速報】最高裁・応急仮設住宅の供与終了後の占有と使用料相当損害金/福岡高裁・自死の公務起因性ほか計3件(2026年9月19日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは3件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件)。裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。

1 最高裁判所第二小法廷 令和8年9月14日判決(令和7(受)1337・建物明渡等請求事件)

事案の概要

東日本大震災で宮城県気仙沼市の住宅を失った夫妻が、災害救助法に基づく応急仮設住宅として東京都目黒区の区民住宅を無償で使用していました。宮城県知事の通知により平成30年3月31日で供与が終了しましたが、夫が脳梗塞を患い転居が困難であったことから期限後も占有を継続したため、目黒区が使用料等相当損害金の支払を求めた事案です。

判断の要旨

上告棄却。仮に区による退去要求が権利濫用または信義則違反に当たるとしても、そのことから占有による使用料等相当損害金が発生しないことにはならないとして、請求を認容した原審(東京高裁令和7年2月12日・令和6(ネ)1962)の判断が是認されました。
三浦守裁判官の反対意見があり、国際人権規約および災害救助法の趣旨、夫の重篤な病状等の具体的事情を考慮すれば区長の供与終了は法令の趣旨に反するとして、原判決の破棄差戻しを主張しています。

実務上のポイント

  • 供与終了措置の当否と、占有による損害金発生の可否とを切り分けた判断です。
  • 反対意見が付されており、災害時の住宅供与をめぐる実務・立法論に影響し得ます。
  • インターネット関連業務への直接の影響はありません。
  • 裁判所サイト上、裁判要旨欄は空欄であり、上記は判示事項および判決文に基づきます。

出典:裁判例詳細(最高裁判所第二小法廷 令和8年9月14日)
判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97044.pdf

2 福岡高等裁判所 令和8年8月21日判決(令和8(行コ)5・遺族補償年金等不支給決定処分取消請求控訴事件)

事案の概要

直方市の職員が自死したことにつき、遺族が公務に起因するものであると主張して、公務外と認定した処分の取消しを求めた事案の控訴審です。うつ病発症の公務起因性の有無が争点となりました。

判断の要旨

控訴棄却。介護保険係(定型的業務)から工業振興係(非定型的な企画立案業務)への異動を「急激かつ著しい職務内容の変化」に当たると評価し、22年間同一業務に従事してきた経歴、新業務への適性を感じていなかった事情、上司による支援の抑制等から、強度の精神的又は肉体的負荷を受けたと認定して、公務起因性を肯定し処分を取り消した原判決が維持されました。

実務上のポイント

  • 配置転換に伴う業務内容の質的変化を負荷評価の中心に据えた判断であり、公務災害・労災の認定実務において参照価値があります。
  • 裁判所サイト上、判示事項・裁判要旨欄は空欄であり、上記は判決文に基づきます。

出典:裁判例詳細(福岡高等裁判所 令和8年8月21日)
判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96968.pdf

3 東京地方裁判所立川支部 令和8年8月17日判決(令和4(ワ)461・損害賠償請求事件)

事案の概要

精神科病院に長期入院していた患者が、(1)新型コロナウイルス感染時に施錠された病室に収容されたことが違法な監禁に当たる、(2)退院支援義務の不履行がある、(3)退院の申出への対応が不適切であったとして、医療法人および院長・主治医らに対し損害賠償を求めた事案です。

判断の要旨

原告の請求はいずれも認められませんでした。施錠については、東京都への報告等から令和3年3月9日以降は病室を施錠していないと認定されています。
退院支援義務については、精神保健福祉法の規定構造から、任意入院においては退院の申出後の義務にとどまるとして、申出前の一般的な退院支援義務が否定されました。また、平成30年1月のグループホーム入居希望の表明は「要望」にとどまり退院の申出には当たらないとされています。

実務上のポイント

  • 任意入院者に対する退院支援義務の範囲と「退院の申出」の意義について具体的な判断を示したもので、精神科医療をめぐる損害賠償実務の参考となります。
  • 本件にインターネット関連(発信者情報開示・名誉毀損・著作権等)の争点は含まれません。
  • 裁判所サイト上、判示事項・裁判要旨欄は空欄であり、上記は判決文に基づきます。

出典:裁判例詳細(東京地方裁判所立川支部 令和8年8月17日)
判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97036.pdf

未精査の新着裁判例

福島地方裁判所いわき支部 令和8年7月6日判決(令和8(ワ)第8号・補助金返還等請求事件)については、裁判所サイトの判示事項・裁判要旨欄がいずれも空欄であり、判決文PDFからもテキストを抽出できなかったため、要旨を確定できていません(未精査)。推測による補完は行いません。
出典:裁判例詳細(福島地方裁判所いわき支部 令和8年7月6日)

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。