ネットの投稿を削除してほしい。発信者情報開示請求とは何が違う?弁護士が分かりやすく解説します
Q インターネットの掲示板やSNSに、私を中傷する投稿をされました。まずは投稿を消してほしいのですが、どうすればよいでしょうか。「発信者情報開示請求」という言葉も聞きますが、削除とは違うものなのでしょうか。
A 投稿を消してもらう手続(削除請求・送信防止措置依頼)と、投稿した人を特定する手続(発信者情報開示請求)は、目的も、求める相手も別の手続です。両方をお考えの場合には、進める順番と証拠の残し方に注意が必要です。
【解説】
1 目的も相手も違う、別々の手続です
まず、二つの手続の違いを整理します。
削除請求(送信防止措置依頼)は、「投稿を消してもらう」ための手続です。求める相手は、掲示板やSNSの運営者、サーバの管理者などです。法律上の根拠としては、情報流通プラットホーム対処法3条です。
発信者情報開示請求は、「誰が投稿したのかを教えてもらう」ための手続です。こちらは、情報流通プラットフォーム対処法5条1項に根拠があります。開示された氏名・住所をもとに、改めて慰謝料などを請求していくことになります。
つまり、投稿を消してもらっても、それだけで投稿者が判明するわけではありません。逆に、投稿者が判明しても、投稿が自動的に消えるわけでもありません。
2 法律の名前が変わりました
これまで「プロバイダ責任制限法」と呼ばれていた法律は、令和6年の改正により名称が変わり、正式名称は「特定電気通信による情報の流通によって発生する権利侵害等への対処に関する法律」となりました。略称は「情報流通プラットフォーム対処法」(情プラ法)です。この改正法は令和7年(2025年)4月1日に施行されています(総務省「インターネット上の違法・有害情報に対する対応(情報流通プラットフォーム対処法)」)。
この改正では、大規模なプラットフォーム事業者について、削除の申出を受け付ける窓口や方法を公表すること、申出を受けたら迅速に調査すること、その結果を申出をした人に通知することなどが義務付けられました。古いご案内には旧法の名称が残っていることがありますので、ご注意ください。
3 削除を求める方法は、大きく三つあります
(1)サイトの通報フォーム・削除依頼フォームを使う
多くのSNSや掲示板には、利用規約違反の投稿を通報する窓口が用意されています。費用が掛からないことが一般的です。削除の場合は、まずはここから試すことが多いです。
(2)書面(送信防止措置依頼)で求める
フォームで対応してもらえない場合、書面で削除を求める方法があります。関係団体が作成した標準的な書式が「情報流通プラットフォーム対処法関連情報サイト」(https://www.isplaw.jp/)で公開されています。
(3)裁判所の手続を使う
任意の依頼で消してもらえない場合、裁判所に削除の仮処分を申し立てる方法があります(民事保全法23条2項)。仮処分は、判決を待っていては間に合わないときに、暫定的に削除を命じてもらう手続です。なお、申立てにあたっては、裁判所に担保金を立てるよう求められるのが通常です。
4 なぜ、すぐに消してもらえないことがあるのか
「明らかにひどい投稿なのに、なぜ運営者はすぐ消さないのか」と思われるかもしれません。これは、運営者が板挟みの立場にあるためです。
情報流通プラットフォーム対処法3条1項は、権利を侵害された人に対する運営者の責任を一定の場合に限定しています。他方、同条2項は、削除をしたことで投稿した人から責任を追及される場合について定めており、その2号は、運営者が投稿者に対して削除に同意するかを照会し、照会を受けた日から7日を経過しても投稿者から同意しない旨の申出がなかったときは、運営者は投稿者に対して賠償責任を負わない、としています(この規定は旧プロバイダ責任制限法3条2項2号と同じ内容です。総務省「プロバイダ責任制限法逐条解説」令和5年3月)。
運営者としては、消しても消さなくても責任を問われうるため、慎重に判断します。この照会の期間があるために、削除まで一定の日数がかかることがあるのです。
5 順番に注意 ― 消してしまうと特定が難しくなることがあります
投稿者を特定したいとお考えの場合、削除を急ぎすぎると困ることがあります。
第一に、投稿が消えると、どのような投稿がいつどこにあったのかという証拠が失われます。削除を求める前に、投稿が表示されているページを、URLと日時が印字される形で紙に印刷して保存しておくことをお勧めしています。
第二に、通信記録(ログ)の保存の問題があります。投稿を削除すると、ログまで消えることがあります。
そのため、「消してほしい」と「誰か知りたい」の両方をお考えの場合には、証拠を確保したうえで、開示の手続と並行して進めるかどうかを検討することになります。
6 時間の制限について
投稿者に対する慰謝料などの損害賠償請求権は、損害および加害者を知った時から3年、不法行為の時から20年で時効により消滅します(民法724条)。投稿者が誰か分からないうちは3年の期間は進みませんが、上記のログの問題がありますので、早めのご相談をお勧めします。
7 最後に
削除が認められるかどうかは、投稿の内容が名誉毀損やプライバシー侵害にあたるといえるか、その投稿によってどのような不利益が生じているかなど、事案ごとの事情によって判断されます。どなたの事案でも同じ結果になるわけではありませんので、実際の投稿を拝見したうえでの検討が必要です。お困りの際は、投稿ページを印刷したものをお持ちいただき、ご相談ください。
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※本記事は一般的な法律解説であり、個別の事案についての法的助言ではありません。具体的な事案は弁護士にご相談ください。

