【判例速報】名古屋地裁・マッチングアプリで既婚を秘した交際と貞操権侵害(2026年9月20日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは1件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただしマッチングアプリを通じて知り合った当事者間の紛争であり、オンラインでの出会いに起因する損害賠償実務の参考となります)。

【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、既報分との重複を個別に除外しています。

1 名古屋地方裁判所 令和8年7月21日判決(令和7(ワ)2711・損害賠償請求事件)

事案の概要

女性(原告)が、マッチングアプリを通じて知り合った男性(被告)から「離婚済み」であると告げられ、独身であると信じて約1年3か月にわたり性交渉を伴う交際を続けたところ、被告が実際には既婚者であったことが判明した事案です。原告は、貞操権侵害を理由に慰謝料等合計330万円の損害賠償を請求しました。

判断の要旨

一部認容。被告に対し、121万円(慰謝料110万円+弁護士費用11万円)および令和6年8月20日から支払済みまで年3%の割合による遅延損害金の支払を命じました。その余の請求は棄却し、訴訟費用は30分し、その19を原告、その余を被告の負担としています。
裁判所は、被告が独身であると偽ったうえ、婚姻を示唆する言動(婚姻届の購入、ペアリングの着用、原告の長男に対する「結婚するから大丈夫」との発言、被告の配偶者の両親に対する発言など)を重ねていたこと、交際期間が約1年3か月と長期にわたることから、原告および長男の受けた精神的苦痛は大きいと認定しました。遅延損害金の起算日については、不法行為が継続していたとして、その最終日である令和6年8月20日としています。

実務上のポイント

  • マッチングアプリで知り合った相手が既婚者であることを秘した場合の貞操権侵害について、慰謝料額(110万円)および弁護士費用の認定額を示した事例です。
  • 不法行為が継続する類型において、遅延損害金の起算日を「不法行為の最終日」とした点は、同種事案の請求構成において参考になります。
  • 発信者情報開示・名誉毀損・著作権等のインターネット関連の争点は含まれていません。もっとも、オンラインでの出会いに起因する紛争であり、マッチングアプリ関連事件の参考となります。
  • 裁判所ウェブサイト上、判示事項欄・裁判要旨欄はいずれも空欄であり、上記は判決文PDFに基づきます。

出典:裁判例詳細(名古屋地方裁判所 令和8年7月21日)
判決文PDF:https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-96965.pdf

出典

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。