【判例速報】最高裁・リニア中央新幹線談合と独禁法「競争の実質的制限」/東京地裁・字幕翻訳の配信と放送事業者の過失(2026年9月17日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは2件です(うちインターネット関連分野に直接該当するものは1件。もう1件は最高裁の独禁法(入札談合)に関する判断です)。

【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、既報分との重複を個別に除外しています。

1.最高裁判所第三小法廷 令和8年9月14日決定(令和5(あ)395・私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律違反被告事件)

  • 裁判種別:決定/結果:棄却
  • 原審:東京高等裁判所 令和3(う)784(令和5年3月2日)

事案の概要

リニア中央新幹線の品川駅・名古屋駅の地下開削工法によるターミナル駅新設工事について、指名競争見積方式により順次発注される各工区の受注予定事業者を、大手総合建設業者4社の幹部らが事前に決定するなどしたとされる独禁法違反被告事件です。

判断の要旨

各上告を棄却。裁判所ウェブサイトの判示事項は、「指名競争見積方式により順次発注されるリニア中央新幹線の地下開削工法によるターミナル駅新設工事に関する大手総合建設業者4社の幹部らの行為が当該工事の受注に係る取引分野における『競争を実質的に制限する』(独禁法2条6項)ものに当たるとされた事例」とされています。
決定文は、競争の実質的制限の判断に当たり、まず役務の現実的な供給可能性を客観的事実から検討することが相当であるとしたうえで、当該4社が高い技術力および充実した人的・物的資源を保有し、営業線近接工事等の施工実績により基本的な知見や技術等を備えていたこと、技術検討の対象でなかった事業者も実際に工事を施工した事実、月1回程度の頻度で会合を開催して各工区の受注を目指す方針を共有し、積算資料や見積金額に関する情報を提供していたことを指摘しています。裁判官渡辺惠理子の補足意見(規範的評価における客観的事実の重要性を強調するもの)が付されています。反対意見はありません。

※詳細ページの「裁判要旨」「参照法条」欄は空欄であり、本要約は判示事項および決定文PDF(courts.go.jp掲載)の記載に拠ります。

実務上のポイント

入札談合の刑事事件において、「一定の取引分野における競争を実質的に制限する」との要件の認定枠組み、とりわけ役務の現実的な供給可能性を客観的事実から認定するという手順を示した最高裁の判断です。独禁法・入札関連の刑事弁護および企業のコンプライアンス実務に直結します。

出典:裁判例詳細決定文PDF

2.東京地方裁判所 令和8年9月4日判決(令和6(ワ)70293・損害賠償請求事件/権利種別:著作権)

詳細ページの「結果」「判示事項の要旨」「裁判要旨」「参照法条」欄はいずれも空欄であるため、以下は判決文PDF(courts.go.jp掲載)の記載に拠ります。

事案の概要

外国映画の日本語字幕翻訳を業とする原告が、自らが翻訳した字幕を付した外国映画2作品(「ゾンビ」の各作品)が放送・配信されたことにより公衆送信権および氏名表示権を侵害されたとして、スカパーJSAT株式会社、株式会社スカパー・エンターテイメント、ディスカバリー・ジャパン株式会社および株式会社インタラクティーヴィに対し、合計4853万0240円の損害賠償を求めた事案です。放送のほか「スカパー!オンデマンド」等のインターネット配信を含む利用形態が問題となりました。

判断の要旨

原告の請求をいずれも棄却。裁判所は、公衆送信を実行した者は番組供給者である訴外ジュピターエンタテインメントであると認定したうえ、被告スカパーJSAT、同スカパー・エンターテイメントおよび同インタラクティーヴィについては、番組供給者から受信した番組を機械的に放送しているにすぎないこと、ジュピターエンタテインメントから権利処理について表明保証を受けていたこと、権利処理に疑義を生じさせる事情がなかったことを挙げ、権利確認義務を負わず過失がないと判断しました。

※被告ディスカバリー・ジャパンに対する請求に関する判断の詳細、および氏名表示権侵害に関する判示の詳細は未精査です。推測による補充は行いません。

実務上のポイント

インターネット配信・放送のプラットフォーム事業者が、番組供給者による権利処理の瑕疵についてどこまで責任を負うかに関する判断です。①機械的に受信・送出しているにすぎないという事業の性質、②供給者からの権利処理に関する表明保証の存在、③権利処理に疑義を生じさせる事情の不存在、という3点を挙げて過失を否定しており、配信事業者側の防御の組み立てに加え、権利者側が事前通知等によって「疑義を生じさせる事情」を作出することの意味を検討するうえでも参照価値があります。

出典:裁判例詳細判決文PDF

確認範囲・精査状況について

  • 本日確認した新着一覧のうち、裁判年月日が直近2週間以内のその他の裁判例(最高裁第二小法廷 令和8年9月14日・同9月9日、大阪地裁 令和8年9月10日、知財高裁 令和8年9月9日(3件)・同9月3日、東京地裁立川支部 令和8年8月17日、仙台地裁 令和8年8月3日 等)は、いずれも当サイトの既報分です。
  • 下級裁判所(速報)一覧は先頭30件のみが静的に取得可能であり、31件目以降は本日の確認範囲に含まれていません。
  • 上記2件はいずれも原典(courts.go.jp掲載の裁判例詳細ページおよび判決文・決定文PDF)を確認済みです。

出典

本記事は、裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)掲載の以下の公式ページに基づいています。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。