【要注意】安易な『著作権侵害認定』は危険! 『アイデア』の範囲なら著作権侵害不成立
さて、前回、類似性が無いとしても、翻案権の侵害として違法となる場合があるが、単なるアイデアを採用しただけでは違法にならないというお話をしました。
どんな場合であれば、翻案権の侵害にはならないのでしょうか。
それは、
①思想、感情もしくはアイデア、
②事実もしくは事件、
③表現上の創作性がない部分(=ありふれた表現)、
が類似しているだけであれば、翻案権の侵害にはならないとされます。
なお、①~③を厳密に区別することに大きな意味はないと思われます。
私からすれば、②も③もアイデアの一種です。
さて、たとえば、仮に昔話の桃太郎に今でも著作権が認められていると仮定してみましょう。
まず、「桃から人間が産まれる。」という、話の筋自体は、画期的であるといえます。しかし、①アイデアに過ぎないといえるでしょう。
また、「桃から人間が産まれた世界では、鬼の住む島がある。」というだけでは、②事実もしくは事件が類似しているだけに過ぎないといえます。
②でいう「事実」や「事件」は歴史的真実・科学的真実でなくても差し支えないのです。
さらに、「桃から生まれた人間がおじいさんとおばあさんに育てられる。」というだけでは、③ありふれた表現といえます。
しかし、以上を上げた要素を超えて、「桃から生まれた人間が、犬・猿・鳥をお供にする。」「お供にする方法は、きび団子を与える方法である。」などの要素が入ってくると、桃太郎の翻案となる可能性が高まります。
ただ、実際の著作物について、どこまでがアイデアの採用で、どこからが翻案権侵害(著作権侵害)になるかは、明確な境界があるわけではありません。ケースバイケースとしか言えないのです。
しかし、単にアイデアを得ただけで、直ちに違法になるわけではないことは、抑えておいていただけると幸いです。
昨今、単にアイデアを得ただけではないかと思われる創作物に対し、「著作権侵害である。」「翻案権侵害である。」等と公の場で述べる例が見受けられます。
しかし、違法でもないのに「著作権侵害である。」「翻案権侵害である。」等と公の場で述べることは、むしろ、述べた側が違法になることすらあります。
重々ご注意ください。


