類似性がなくても翻案権侵害の可能性
さて、前回までで、類似性・依拠性のお話をしました。
結局のところ、類似性が出発点という印象を持たれたかと思います。
ただ、類似性さえなければよいかというとそうではありません。
あるいは、少しでも元の著作物から違っていれば絶対に適法になるわけでもありません。
少し変えただけでは、翻案権の侵害として違法になります。
なお、著作権と翻案権を並列に論じましたが、翻案権は、著作権の一つです。
ただ、イメージを掴みやすいように、このような書き方をしております。
では、「翻案」とは何でしょうか。
翻案とは、
①既存の著作物に依拠し、
②その表現上の本質的な特徴の同一性を維持しつつ、具体的表現に修正、増減、変更等を加えて、新たに思想又は感情を創作的に表現することにより、これに接する者が既存の著作物の表現上の本質的な特徴を直接感得することのできる別の著作物を創作する行為
をいいます。
典型的なものは、小説の映画化です。
小説と映画は全く違う媒体なので、「類似性がある」とは言えません。しかし、小説の原作者の許可なく映画化してはいけないというのは、なんとなくお分かりいただけると思います。その「なんとなくいけない」という感覚が翻案権だと思ってください。
手っ取り早く掴んでいただくために、全く違う媒体を例示しました。
ただ、同じ媒体でも翻案権侵害は成立する可能性はあります。ご注意ください。
たとえば、原作漫画に対し、原作者の許可なくスピンオフ漫画を描いた場合、同じ媒体でも翻案権侵害が成立することはありえます。
ただし、著作権を語るうえで絶対に忘れてはいけないのは、「単なるアイデアは、著作権として保護されません。」ということです。
しかも、アイデアに留まる以上、そのアイデアはどんなに画期的であったとしても、著作権として保護されません。
つまり、ある小説からアイデアを得て、自分独自の表現として映画を作ることは、違法ではありません。
そうなると、翻案権の侵害となるのか、単にアイデアを得ただけなのかの境目については、皆様が気になるところだと思われます。
これについては、次回、一緒に考えましょう。


