【判例速報】岐阜地裁・死体の運搬に同行した同居人に死体遺棄の共同正犯を認定(2026年11月7日)

裁判所ウェブサイトに掲載された裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のもの1件を取り上げます(インターネット関連分野に直接該当するものは0件です)。裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、裁判年月日ベースで直近の新着分を確認しています。判例は、裁判所ウェブサイトに掲載された判決文に基づいて要約しています。

岐阜地裁 令和8年10月1日判決(令和7年(わ)第404号、第452号)

事件名:死体遺棄被告事件(岐阜地方裁判所刑事部)

事案の概要

被告人が、交際・同棲していたAと共謀の上、①令和6年12月15日、B(当時33歳)の死体を自動車に積載して運搬し、山林斜面に投棄し、②令和7年8月7日、D(当時53歳)の死体を自動車に積載して運搬し、山林斜面に投棄したとして起訴された事案です。判決によれば、Aが、Bを死亡させた上でその死体を運搬・投棄したこと、Dをその嘱託を受けて殺害した上でその死体を運搬・投棄したことは、関係証拠上明らかで争いもないとされています。弁護人は、被告人は「実行行為はもとより何らの寄与もしておらず」、第1事件については死体の存在すら認識していなかったなどとして、共同正犯の成立を争い、無罪を主張しました。

判決の内容

  • 主文:「被告人を懲役2年に処する。」「未決勾留日数中250日をその刑に算入する。」(主文に刑の執行猶予の言渡しはありません。求刑は懲役3年です。)
  • Aは、被告人は死体の運搬・投棄に関与していないとする供述をしていました。判決は、Aには同棲していた被告人をかばうため虚偽の供述をする強い動機があることなどに照らし、Aの供述のうち被告人の関与を否定する部分を「そのまま前提とすることはできない」としました。
  • 第1事件について、判決は、被告人がBの死後もAと車で行動を共にしていたことなどから、死体の運搬の出発地となったスーパーの駐車場に到着した頃までに、被告人がBの死体があるのを認識していたのは明らかであるとしました。また、その間に2人の間で何らかの話合いがされなかったとは考え難く、話合いがされたのであれば死体遺棄の意思を通じ合ったのは明らかであるとした上、仮に話合いがなかったとしても、Aが死体を捨てるのに必要な物を(一部は2人分)購入したのを見ればAの意図は分かったはずであり、その意図を知りながらAに同行したのであるから、投棄場所に向けて出発した時点までに、Aと死体遺棄の意思を通じ合っていたと認めました。
  • 寄与の程度について、判決は、「運転や投棄はAのみが行い、被告人は助手席に乗っていただけというAの供述を前提としても」、被告人は、Aの行動を支持して長時間・長距離(約2時間14分、約92km)にわたり同行することで、「移動中はAと共に死体を管理するとともに、必要に応じて運転や投棄等を手伝うこともできる状態を保ってAを支えた」として、「死体遺棄の犯行に相応に重要な寄与をした」としました。死体の対処が、Aと同棲し経済的にも依存していた被告人にとっても「死活問題」であったことから、自己の犯罪として行う意思にも欠けるところはないとして、死体遺棄の共同正犯の成立を認めました。
  • 第2事件についても、判決は、Aが自宅の車庫にDの車を止めた後の午前9時台の段階で、2人の間で死体を遺棄する意思疎通がされなかったとは「一層考え難い」とし、仮にそれがなかったとしても、Aと共に死体を乗せた車で自宅を出発する時点では被告人は死体の存在を認識しており、その時点でAと死体遺棄の意思を通じ合ったと認め、約1時間37分をかけて約69kmにわたり同行したことについて、第1事件と同様に共同正犯の成立を認めました。出発直前にAから突然打ち明けられ、拒絶できずに車に乗せられたにすぎないとの弁護人の主張は、「証拠上の根拠を欠いている」として退けました。
  • 量刑について、判決は、各犯行を主導したのがいずれもAであることには「留意が必要」としつつ、被告人が従属的とはいえ各犯行にそれぞれ相応に重要な寄与をしたこと、そのような関与を「1度ならず2度までも重ねた」ことは「相応に厳しく評価せざるを得ない」とし、前科がないこと、精神障害があること等を併せ考慮しても、「主文程度の実刑は免れない」としました。

実務上のポイント

  • 運転や投棄を自ら行ったと認定されていない同行者について、長時間・長距離の同行により「死体を管理する」とともに手伝うこともできる状態を保ってAを支えたことを「相応に重要な寄与」と評価し、死体遺棄罪(刑法190条)の共同正犯(刑法60条)を認めた事例です。
  • 共犯者が被告人の関与を否定する供述をしている場合に、被告人をかばう動機や客観的な行動経過との整合性から、その部分の信用性を否定した判断の例としても参考になります。
  • 事実認定では、Aと被告人がそれぞれインターネットで繰り返し消費者金融やカードローンに関する閲覧・検索をしていたことや、Bの携帯電話の最後の発信・位置情報なども、証拠から認められる事実として挙げられています。

出典:裁判所ウェブサイト(判例ページ)/判決文PDF

出典

  • 岐阜地裁令和8年10月1日判決(令和7年(わ)第404号、第452号):https://www.courts.go.jp/hanrei/97241/detail2/index.html / https://www.courts.go.jp/assets/hanrei/hanrei-pdf-97241.pdf
  • e-Gov法令検索:刑法(明治四十年法律第四十五号)60条、190条

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。