弊所FAQ11~信託は判断能力があるうちに~

Q 親の判断能力が無くなってきました、法定後見は面倒そうなので、信託を考えています。相談に乗ってください。

A 信託も契約なので、判断能力が無くなってしまったら、信託はできません。また、信託にも、課税リスクなど面倒なところはあります。

【解説】

近頃、「法定後見の代わりに、信託を考えています。」というご相談が増えています。法定後見に対する消極的なニュースが増え、信託に対する積極的なニュースが増えたからかも知れません。

しかし、信託は、契約です。契約は判断能力がないと締結できません。つまり、信託は、判断能力があるうちに限り使えます。もし、判断能力がなくなったら、信託は使えません。選ぶとすれば、法定後見となります。

そのため、「法定後見の代わりに、信託を考えています。」という御期待には応えられません。

もし、信託をご検討であれば、親御様の判断能力があるうちに選ばなければなりません。

なお、信託を、かなり大雑把に申し上げると、財産の一部を、形だけ所有権移転をして、管理を任せるというものです。
たとえば、親御様が、アパート経営をしていたとします。しかし、判断能力には問題ないものの、体力的に辛くなったので、お子様にアパートの所有権を形だけ移転して、アパートの管理をお子様に任せるというわけです。

ただ、形だけでも所有権を移転させることにより、課税リスクがあります。したがって、信託を検討する場合には、税理士の先生のご協力が不可欠です。

ちなみに、親御様が、判断能力に問題が出てきたときに、お子様に法定の後見人になってもらえば、お子様にアパートの管理を任せることが可能です。ただ、法定の後見の場合は、親御様の財産全ての管理を任せることになります。アパートだけというわけにはいかず、自宅の管理も任せるという意味になります。
どうも、この「財産全て」となってしまうのが、消極的なイメージの原因のような気がします。

それはさておき、法定後見は、あくまで管理を任せるだけです。所有権は、全く移転しません。
そのため、法定後見を使ったとしても、課税リスクは心配する必要はありません。税理士の先生のご協力は不要です。

ということで、そもそも、法定後見と信託は、使える場面が異なること、信託には課税リスクがあるというお話でした。