ハンコについて本気出して考えてみた5~「だろう」が覆る場合~

さて、前回「本人が所有するハンコと認められても、あくまで『本人が捺しただろう』に過ぎません。『だろう』が覆る場合があります。」と申し上げました。

そこで、「本人が捺しただろう」が覆った例をご紹介します。

まず、夫の実印を預かっていた専業主婦の妻が、夫の実印を借用書に押印してしまった例です。この例は、夫が所有するハンコであることは認めるけれども、夫が捺したわけではないという主張が通ったというわけです(東京高判平成12年5月24日)。

また、実印を盗まれたことを立証した結果、「本人が捺しただろう」が覆った例はあります(東京地判平成22年10月13日)。

ここまで申し上げると、「意外と『本人が捺しただろう』は覆るのではないか。」とお考えになったかも知れません。

しかし、逆です。「本人が捺しただろう」は中々覆りません。なかなか覆らないからこそ、覆った例が注目されているだけです。

次回は、覆らなかった例をご紹介します。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。