事業所得と養育費の関係1~養育費の考え方~

動画で「事業所得のある方の養育費算定は、算定表があっても難しい」ということを申し上げました。

その動画をご覧になってくださったから「どう難しいのか、詳しく知りたい。」というお声をいただきました。

そこで、お言葉にあまえて、どのように難しいのかを御説明していきたいと思います。

今回は、養育費の考え方について御説明いたします。
正直申し上げて、かなり難解なうえに、具体例を示すのが困難です。
そのため、いつも以上に分かりづらいかも知れませんが、お付き合いいただけますと幸いです。

説明の前提として、用語の定義をいたします。
養育費を支払う側(非親権者)を「義務者」と呼びます。養育費を支払う義務がある者という意味です。
ちなみに、養育費をもらう側(親権者)は、「権利者」と呼びます。養育費をもらう権利がある者という意味です。

養育費は、「離婚後の子の生活費である。」と申し上げました。そして、子に離婚の責任はない以上、具体的にいうと、義務者は、自分の生活と同等レベルの生活を子にも保持させる程度の生活費を渡すべきとされています。

では、具体的にはどの程度の生活費でしょうか。

大雑把にいうと、義務者の総収入から、今の生活レベルを維持するのに必要な経費を引きます。
養育費では、事業所得者はもちろん、給与所得者にも今の生活レベルを維持していくのに必要な経費があると解釈します(所得税の計算とは異なる解釈をとるわけです。)。

総収入から今の生活レベルを維持していくのに必要な経費を引いた額を、養育費では「基礎収入」といいます。
事業所得者の方も「基礎収入」と表現します(「基礎所得」などとは呼びません。)。

この基礎収入こそが、義務者や子の生活費に回せる額といえます。
そして「自分の生活と同等レベルの生活」というと、何となく義務者と子で、基礎収入を頭割りするのかと思われるかも知れません。
ただ、やはり、生活費は大人である義務者の方がかかります。そのため、義務者と子では、傾斜をつけて生活費を配分するわけです。傾斜のつけかたについても、後日ご説明いたします。

傾斜をつけて配分された金額は、義務者と同等のレベルの生活を保持させる程度の生活費といえるということになります。ただ、この全額を義務者が支払うべきかというと、そうでもありません。

権利者も親である以上、子の生活費を負担するべきです。したがって、どの程度負担すべきが問題となります。
親である以上、折半という考えもあるかも知れません。
しかし、折半だと権利者の収入が少ない時に、権利者の負担感が大きくなります。

そこで、双方の基礎収入で按分することになっています。そして、義務者に按分された額こそが、養育費となります。したがって、義務者の基礎収入が高く・権利者の基礎収入が低いほど、養育費の額は高くなります。
逆に、義務者の基礎収入が低く、権利者の基礎収入が高いほど、養育費の額は低くなります。

では、まとめましょう。

①義務者の基礎収入(総収入-今の生活レベルを維持していくのに必要な経費)を算定する。
②基礎収入を、義務者と子で傾斜をつけて配分する。
③子に配分された金額について、義務者の基礎収入と権利者の基礎収入で按分する。

ここで具体例を示します。
ただ、基礎収入の計算の具体例を示そうとすると、それだけで相当時間がかかるので、基礎収入の計算は終わったものとして示します(①の計算は終わったものとします。)。
本日のところは、基礎収入は総収入の40~50%くらいというイメージを持っていてください。

今日は、権利者の基礎収入が100万円、義務者の基礎収入が200万円とします。
子は10歳の子が1人とします。
そこで、義務者の基礎収入200万円を、義務者100:子62のように傾斜をつけて配分します。
10歳の子は、大人の62%くらいしか生活費がかからないという意味です。
なぜ、62なのかは、後日お話します。

200万円を100:62で分けると、だいたい、約124万円と約76万円に分かれます。
この、約76万円が、子に配分された金額となります(②の計算)。


そして、約76万円を、基礎収入の割合である義務者200万円:権利者100万円で按分すると、
義務者は約51万円となります(③の計算)。
この約51万円が義務者が支払うべき1年分の養育費というわけです。

ここで、ちょっと違和感を覚えた方もいらっしゃるかも知れません。
それは、②の段階で、なぜ、権利者の基礎収入を加味しないのであろうかという点です。

私も違和感を覚えて調べたり、対案を検討したりしましたが、ハッキリした答えは見つかりませんでした。
ただ、先ほど少し挙げたように、養育費の発想自体が、「義務者は、自分の生活と同等レベルの生活を子にも保持させる」義務があるという点に立脚しているからだと思われます。
つまり、離婚前の生活と同等レベルではなく、離婚後の義務者の生活と同等レベルであれば良いという考えに立っているので、②では、権利者の基礎収入を加味していないのだと思われます。
別の言い方をすると、仮に義務者一人と子のみで生活することになった場合と同等レベルであれば良いという考えに立っているからだと思われます。

異論もあろうとは思いますが、現在の実務はこのような考えに立っていることを御承知おきください。

こんなに長くてややこしい文章をお読みいただき、ありがとうございました。