相続に関するQ&A3~戸籍は「出生から死亡まで」~

Q 財産の調査に着手しました。JICCや、CICに連絡したり、銀行に連絡したりしました。どの機関でも「戸籍が必要です。」と言われます。
戸籍は、父が亡くなった旨の記載がある戸籍が手元にあります。これを出せばいいんですよね?

A 基本的は、各機関の担当の方に確認してください。お父様に関する相続の場合は、お父様が亡くなった旨の記載がある戸籍のみならず、ご自身の最新の戸籍が必要となることも多いです。

Q その2通だけでよいのでしょうか。

A 各機関の方が、その2通だけでよいとおっしゃれば、手続としては、その2通だけで足ります。しかし、念のため、お父様の出生から死亡までの戸籍を取得することをお勧めします。

Q なぜですか?

A 相続人が他にいないかを確認するためです。単純承認をするのであれば、ほかに相続人がいた場合、ご自身の手取りが下がります。

Q 現在手元にある戸籍にも、父の生年月日が記載されています。これは、出生から死亡までの戸籍といえるのではないですか?

A 戸籍は、強制的に新しくなったり(改製)、自分自身で新しくしたりすることができます(結婚・分籍・転籍)。そして、原則として戸籍には、新しくなった後の情報しか載っていません。そのため、新しくなる前の戸籍を取得しなければ、出生から死亡までの戸籍を取得したとはいえないのです。

Q そこまでしなければならないのでしょうか。

A はい。確かに、稀ではありますが、出生から死亡までの戸籍を取得することによって、新たに相続人が発見されることがあります。

【解説】

財産調査に着手をすると、必ず立ちはだかるのが、戸籍の問題です。

どんな戸籍が必要かは、機関によって異なります。一番少ないと、上記のQ&Aのとおり、亡くなった方の戸籍と、相続人ご本人の戸籍の2通で足ります。しかし、機関によっては、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍を求められることがあります。

また、仮に求められなくても、相続人の確認のため、出生から死亡までの戸籍は取得しておいた方が良いです。

単純承認する場合は、相続分に関わりますので、取得した方が良いです。
相続放棄を検討している場合も、相続放棄をした後、誰に遺産が行くかを見極めるために、取得した方がいいです。つまり、現時点で、他の相続人に心当たりがなく、戸籍を取得して初めて他の相続人が発見できたということは、自分自身にとって、ほぼ初対面の人が相続人というわけです。

そうなると、「自分は遺産に興味はないけど、まったく知らない人に遺産を継がせるのも釈然としない。」というお気持ちになるでしょう。
そういうお気持ちにならないよう、相続放棄を考えていたとしても、出生から死亡までの戸籍を取得した方が無難なのです。

たとえば、故人が、1970年に認知をし、その認知された子が1990年に結婚し、戸籍が2000年に改製されたとします。この場合、亡くなった旨の記載がある戸籍には、2000年以降の情報しか載りません。認知された子が結婚すると、故人の戸籍からは抜けます。つまり、亡くなった旨が記載されている戸籍だけでは、他に相続人がいるか否か、断言できないのです。2000年よりも前の戸籍を取得することにより、認知した子が発見されます。

このような場合がありうるので、念のため、出生から死亡までの戸籍取得をお勧めする次第です。