相続に関するQ&A2~借金の調査へ~

Q まず、プラスの財産やマイナスの財産を調査しなければならないということは分かりました。どちらからすればよいのでしょうか。

A もちろん、プラスもマイナスも同時に調べるのが最良です。しかし、どちらを優先するかと聞かれれば、マイナスの財産である借金の調査を優先することをお勧めします。

Q 借金はどうやって調べればよいですか?

A マイナスの財産(借金)は、信用情報機関である、JICCや、CICで確認してください。

Q すべての借金が、JICCやCICで分かるのですか。

A JICCやCICでわかるのは、銀行・信金・クレジット会社・サラ金業者による借金くらいです。個人の借金や、法人といえども金融業者ではない通常の取引相手の場合には、わかりません。

Q 個人の借金や、金融業者以外の法人の借金を、一括で調べる方法はないのでしょうか。

A 少なくとも、私は存じ上げません。

Q では、どうすればよいのですか。

A 銀行の通帳や、請求書・契約書、確定申告書・登記事項証明書(登記簿)などで地道に探すしかないと考えています。

【解説】

前回、まずは、財産の調査をすることをお勧めしました。3カ月しかないので、プラスの財産も、マイナスの財産も、同時並行で調べてください。しかし、あえて優先順位をつけるとすれば、借金の調査です。
なんとなく、資産(プラスの財産)が優先のような気がするかも知れませんが、私は、借金の調査からお勧めします。

理由をご説明します。たとえば、先に借金の調査を始めて、借金の額が100万円だったとします。この場合、プラスの財産がわからなくとも、相続放棄するか否かの決断をしようと思えばできます。

たとえば、「最悪、プラスの財産が全くないとしても、100万円なら、なんとか払っていけるな。それならば、相続放棄をせず、単純承認してしまおう。」と考えることはありえます。逆に、「もし、プラスの財産が全くないとしたら、100万円なんて払えない。もったいないかも知れないけど、念のため、相続放棄をしよう。」と考えることもありえます。借金の額がわかるということは、リスクの上限が見えるため、決断しやすいのです。

しかし、先にプラスの財産の額がわかっても、なかなか決断は難しいです。たとえば、先にプラスの財産の調査を始めて、プラスの財産が100万円だったとします。しかし、この情報だけで、相続放棄をするか否か決断するのは難しいです。借金の額は、0円かも知れないし、数十万円かも知れないし、数百万円かも知れないし、数千万円かも知れないのです。リスクの上限が見えません。借金の額が0円や数十万円であれば、相続放棄をしないと考えたくなりますし、数百万・数千万であれば、相続放棄をしたいでしょう。
このように、資産の額が先に分かっても、相続放棄をするか否かの決断には、あまり役に立たないといえます。

ただ、例外として、先にプラスの財産を調査した結果、数万円しかなかった場合は、決断できるかも知れません。この場合、「数万円のために、いちいち相続手続きをするのは面倒だ。それに、万一、借金の方が多いと困るので、相続放棄をしてしまおう。」という決断はありえます。実際に、このような理由で、相続放棄をされる方も珍しくありません。

ちなみに、プラスの財産が0円だった場合は、借金の額がわかっていないとしても、相続放棄をすることを強くお勧めします。相続放棄をしないということは、いつ故人の借金の取り立てが来るかわからないという意味です。したがって、プラスの財産が0円で相続放棄しないということは、リターンがないのに、リスクだけ負うことになるため、相続放棄をするべきです。

ということで、財産の調査は、まず、借金からというお話でした。