民事IT裁判FAQ14~和解もWeb会議?~

Q 和解の話し合いの際、裁判官が、原告と被告交互に話を聞くことがあります。これまでは、物理的に、部屋を出入りしたので、相手方に話を聞かれるという心配はありませんでした。しかし、IT裁判だと三者通話ができるweb会議が原則と聞いています。相手方に話を聞かれるということはないのでしょうか。

A 和解で、交互に話を聞く場合には、二者通話モードで話すことになっています。相手方が、うっかり・こっそり話を聞くことはできません。

【解説】
通常の口頭弁論や、弁論準備においては、法廷や弁論準備室という同じ場所で、裁判官・原告・被告が三者で議論をします。しかし、議論が成熟し、和解の機運が高まると、裁判官は、原告・被告交互に話を聞くようにすることも珍しくありません。
たとえば、まず、原告から話を聞き、次に被告から話を聞くといったかんじです。交互に話を聞くということ自体の是非については、ここでは論じません。
ただし、交互に話を聞くことによって、原告も被告も、裁判官に対し、本音で話ができるという側面はあるでしょう。

通常の口頭弁論や弁論準備の場合、原告が裁判官と話している際、被告は、待合室で待機することが多いです。つまり、裁判官と話していない側は、物理的に離れるわけです。

では、IT裁判の場合どうでしょうか?
IT裁判は、原則として三者通話ができるweb会議で行います。通常は、裁判官から呼び出されて、web会議に参加します。

しかし、IT裁判を体験したことがある方はご存知のとおり、裁判官がWeb会議を始めると、「参加」ボタンが押せるようになります。つまり、呼ばれていなくても、同じTeamに入っている限り、参加ボタンを押して入ってくることができてしまうのです。

これを和解の時にもやられてしまうと、相手方がうっかり「参加」ボタンを押して入ってこないかなと心配になるのは当然です。

しかし、ご安心ください。和解をする場合には、web会議モードは一旦閉じ、二者通話モードで話すことになっています。
つまり、原告が裁判官と話している間、被告側には「参加」ボタンは出てきません。つまり、うっかり、入ってくるということはあり得ない仕組みになっています。

したがって、和解のイメージは以下のとおりです。

①まず、三者が話せるweb会議を裁判官が立ち上げる。
②裁判官からの呼び出しに応じて、原告・被告ともWeb会議に参加し、三者で議論をする。
③裁判官が、交互に話を聞きたくなったら、裁判官は、一旦Web会議を終了する。
④裁判官が、二者通話モードを使って原告を呼び出して話を聞く。この間、被告側は、ただ待つのみ。
⑤原告との話が終わったら、裁判官は、二者通話モードを使って被告を呼び出して話を聞く。この間、原告側は、ただ待つのみ。
⑥和解が成立しそうになったら、裁判官は、web会議を起ち上げ、原告被告双方を呼び出す。
⑦調停に付したことを宣言し、和解条項のデータをTeamsのフォルダにアップロードする。
⑧原告被告双方が、ファイル共有機能を使って、和解条項を修正する。
⑨裁判官が修正後の和解条項を読み上げて、和解成立。

なので、交互に話を聞いている最中に関して、余り心配される必要はないというお話でした。