民事IT裁判FAQ10~依頼者にIT裁判動画を見せるのは不可~

Q IT裁判に、依頼者が参加できるのは分かりました。では、IT裁判の様子を録画して、依頼者に見せても良いのでしょうか?

A IT裁判では、録音録画が禁止されています。

Q では、録画をせず、IT裁判の様子を、別のアプリで依頼者に同時配信するのは構いませんか?

A 同時配信も禁止されています。

Q それならば、私の電話と、依頼者の電話を繋いだままにして、音声だけでも依頼者に伝えるというのは、どうでしょうか?

A 「ウェブ会議等を行う際の留意事項」では、明示的に禁止されていませんが、裁判官の許可は必要でしょう。しかも、必要な範囲に限られると思います。IT裁判中、ずっと繋ぎっぱなしにするのは、難しいでしょう。

【解説】
裁判所は、IT裁判の内容を誰が見たり聞いたりしているのかについて、かなり神経をとがらせています。
やはり、裁判は、非常に高度な個人情報を扱うので、情報漏洩対策を万全にしたいと考えているのでしょう。

そのため、依頼者が直接IT裁判に参加できるとしても、録画を見せたり、同時配信を行うことは、認められていません。
「ウェブ会議等を行う際の留意事項」(日弁連会員専用ページに掲載)でも、例外なく、IT裁判の、録音録画・撮影・スクリーンショットが禁止されています。

そのうえ、対依頼者といえども、同時配信の禁止まで明示されています。別アプリを使えば、簡単に同時配信できますが、やってはいけないということです。

なお、よく読むと、「ウェブ会議等を行う際の留意事項」には、電話を繋いだままにして、音声だけを電話で依頼者に伝えることまでは明示的に禁止されていません。
しかし、これまでの私の経験上、電話を繋いだままでIT裁判を行うことに躊躇を示す裁判官が多いです。最低でも、裁判官と協議して許可をもらうことは必要といえます。

たとえば、「仕事の関係で、どうしても、裁判所や法律事務所には行けないが、電話なら可能である。」という方が、「ぜひ、裁判官の口から、裁判官の考えを聞いてみたい。」と思ったとします。そして、この願望自体は、尊重されるべきものですし、裁判官も理解してくださることが多いです。やはり、中立的な立場である裁判官と直接話すことによって納得を得られるということは、ごく自然なことだからです。

ただし、同時配信が禁止ですから、電話しか手段がありません。そこで、私は、裁判官と協議のうえ、裁判官の許可を得て、裁判官が依頼者とだけ話す時に限り、私の電話と依頼者の電話を繋ぎ、裁判官の声が、依頼者に伝わるような状態にしたうえで、裁判官と依頼者で直接話してもらったことがあります。
もちろん、話した後、依頼者との電話は切りました。

これらが奏功し、無事に和解成立となったことがあります。しかし、常にこのような手法が使える訳ではないということは、御承知おきください。