特別養子縁組が利用しやすくなりました

民法改正と同時期に、特別養子縁組の制度が改正されました。

特別養子縁組とは、大雑把にいうと、実親との関係を断ち切る養子縁組です。
普通養子縁組では、実親との関係は切れませんでした。戸籍上も、実親と並列して養親が記載されます。
したがって、普通養子縁組をしたことが戸籍を見るとすぐに分かります。
また、普通養子は、実親の法定相続人になれますし、養親の法定相続人にもなれます。

しかし、特別養子縁組では、原則として、養子の戸籍に実親は載りません。
したがって、特別養子縁組をしたことが戸籍を見ても分かりづらいです。
(ただし、「分かりづらい」であって、よく読めば分かります。)
また、特別養子は、実親の法定相続人にはなれません。
ただ、逆にいえば、相続で実親の借金を背負うことは無いともいえます。

このような特別養子縁組の制度が一部改正されました。

主な改正点は次の2点です。
①原則として15歳までの子を特別養子にすることができるようになりました。
②2段階の審理となり、養親候補者の負担が軽くなりました。
以下、詳しくご説明します。

①原則として15歳未満の子を特別養子にすることができる

改正前は原則として6歳未満、例外的に8歳未満の子に限り特別養子にすることができました。
これでは、8歳を超えると絶対に特別養子にできないことを意味します。
たとえば、「10歳の子が、実親から性的虐待を受けて施設に居る。」という事例の場合、改正前は、どうやっても特別養子縁組制度は使えませんでした。

しかし、これではあまりに不十分ということで、原則15歳未満なら特別養子縁組をすることができるようになりました。
また、例外として18歳未満の子についても、15歳になる前から養親候補のところで生活しており、かつ、やむを得ない事由があれば、特別養子縁組をすることができるとされています(厳密には、養子縁組時に18歳になると不可なので、事実上、申立時に17歳6カ月を超えると難しいです。)。

ここでいう「やむを得ない事由」とは、典型的には、法律の改正を待っていたら15歳以上になってしまった場合をいいます。
これまで特別養子縁組の申立てをしようと思ってもできなかったのであるから「やむを得ない事由」があるというわけです。

②2段階の審理になり、養親候補者の負担が軽くなった

「2段階」と聞くと、却って複雑になったのではないかとお考えかも知れません。
しかし、2段階になったために、養親候補者の負担は軽くなったといえます。

まず、1段階目の審理において、実親の養育状況と、実親の同意の有無を審理します。
そして、2段階目の審理において、養親候補者の養育状況を審理します。

いわば、1段階目において、子が本当に特別養子縁組を必要としているか否かを審理し、2段階目において養親候補者が、本当に養親に相応しいかを審理するのです。

改正前は、これらの審理をまとめてやっていたということです。
そのため、養親候補者にとっては、主に2つの負担があるとされていました。

1つ目は、実親は、審理中ならいつ同意を翻しても良いことになっていたということです。
特別養子縁組は、原則として、実親の同意が必要です。そして、法改正前は、審理中であれば、いつでも同意を撤回できたということです。
これでは、養親候補者は、同意を撤回されるか、気が気ではありません。

2つ目は、実親の目の前で、養親候補者が「実親の養育状況が悪い」と主張しなければならないということです。
仮に、同意が得られない場合、実親の養育状況が悪いことを立証する必要があります。
いくら本当の事とはいえ、他人の悪い点を指摘するのは、心理的負担があるというものです。

この2つの負担を軽くするため、改正後は以下のとおりになりました。

1段階目の審理の中で実親が同意をして2週間経過すると、同意の撤回ができなくなりました(家事事件手続法164条の2第5項)。
「1段階目の審理中なら撤回可能」ではありません。1段階目とはいえ、2週間経つと撤回不能になるのです。
これは、養親にとって、だいぶ気が楽になります。

また、1段階目の審理は、児相長が申立できます。
たとえば、虐待で児相が一時保護・施設入所した子について特別養子縁組をしようとした場合、まず、児相長が1段階目の審理を申し立て、認められた後に養親候補者が2段階目を申し立てることが可能です。

そうすると、実親に対し「虐待をした。養育状況が悪い。」と主張するのは、養親候補者ではなく、児相長ということになります。
2段階目の審理では、養親候補者は「自分たちの養育状況はこのような状況である。」とだけ主張すれば良く、実親を批判する必要はないからです。
これも、養親候補者の心理的負担は軽くなるでしょう。

以上のとおり、法改正によって、だいぶ養親候補者の方の負担は軽くなりました。
特別養子縁組を検討されている方は、ぜひ、ご相談ください。