そもそも、個人情報とは?

個人情報保護法が施行されてから、「個人情報」という言葉に敏感になっていらっしゃる方が多数ではないかと思います。
そこで、何回かに分けて、個人情報保護法に向き合いたいと思います。

今回は、そもそも「個人情報」とは何かについて考えてみましょう。

個人情報保護法2条1項には、以下のとおり記載されています(太字・下線は引用者)。

第二条 この法律において「個人情報」とは、生存する個人に関する情報であって、次の各号のいずれかに該当するものをいう。
 当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等(文書、図画若しくは電磁的記録(電磁的方式(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式をいう。次項第二号において同じ。)で作られる記録をいう。第十八条第二項において同じ。)に記載され、若しくは記録され、又は音声、動作その他の方法を用いて表された一切の事項(個人識別符号を除く。)をいう。以下同じ。)より特定の個人を識別することができるもの(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるものを含む。)
二 個人識別符号が含まれるもの

とりあえず、2号の「個人識別符号」は措きましょう。

まずは、1号の 「当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により特定の個人を識別することができるもの 」を先にみます。

要するに、個人を特定できるものは全て個人情報です。

したがって、氏名それ自体は、個人情報です。たとえば、私の氏名である「浅井裕貴」は、これだけで個人情報です。
「同姓同名がいるのではないか?」という疑問を持たれた方もいらっしゃると思います。しかし、氏名は、それだけで個人を特定しやすいので、個人情報として扱われています。

ただし、「生存する個人に関する情報であって」と書いてあるので、死者の氏名は、個人情報になりません。たとえば、「織田信長」は、氏名かも知れませんが、個人情報にあたらないというわけです(なお、歴史にお詳しい方は、そもそも、「『織田信長』は、氏名ではない。」とおっしゃるかも知れません。その点は、ご容赦ください。)。

その他は、大雑把に申し上げると、たとえ、氏名ではないとしても、個人の特定につながるものは個人情報にあたるというイメージで良いと思います。

たとえば、特定の個人を識別できるようなメールアドレスについては、たとえ氏名が記載されていなくても個人情報にあたります。
つまり、h-asai@shin-shimizu-law.jp(架空のメアドです。)は、新清水法律事務所の浅井ということが特定できるので、個人情報にあたります。

あとは、防犯カメラなど個人の特定が可能な映像、本人の氏名が含まれている等の理由により特定個人を識別できる音声録音情報も、個人情報にあたります。

ちなみに、公表されているか否かは、問いません。つまり、官報・電話帳・新聞・ウェブサイト(ホームページを含みます。)・SNSで公開されているとしても、特定の個人を識別できる情報であれば、個人情報です。
たとえば、私は、氏名および出身校をウェブサイトで公開しています。公開していますが、私の出身校情報も、個人情報にあたるというわけです。

(以上の内容は、個人情報保護法ガイドライン(通則編)2-1を参考にしました。)

なんとなく、個人情報のイメージがつかめたでしょうか。次に、「個人識別符号」に行きましょう。
「個人識別符号」は、個人情報保護法2条2項に規定があります。

 この法律において「個人識別符号」とは、次の各号のいずれかに該当する文字、番号、記号その他の符号のうち、政令で定めるものをいう。
 特定の個人の身体の一部の特徴を電子計算機の用に供するために変換した文字、番号、記号その他の符号であって、当該特定の個人を識別することができるもの
 個人に提供される役務の利用若しくは個人に販売される商品の購入に関し割り当てられ、又は個人に発行されるカードその他の書類に記載され、若しくは電磁的方式により記録された文字、番号、記号その他の符号であって、その利用者若しくは購入者又は発行を受ける者ごとに異なるものとなるように割り当てられ、又は記載され、若しくは記録されることにより、特定の利用者若しくは購入者又は発行を受ける者を識別することができるもの

要するに、個人情報保護法2条2項1号にいう「個人識別符号」は、生体認証に使おうと思えば使えそうなもの(顔の配置、虹彩、静脈、指紋など)と、DNAを指しているというイメージで良いと思います。
つまり、生体認証に使おうと思えば使えそうなものや、DNAは、それだけで個人情報というわけです。


たとえば、普通、指紋だけを見せられても、個人を特定できません。個人を特定できなければ、個人情報保護法2条1項1号にあたらず、個人情報にあたらないという解釈になりそうな気がします。
しかし、やはり、指紋は、一定の機械を使えば生体認証に使えるくらい重要なものなので、敢えて個人情報として扱うのでしょう。

個人情報保護法2条2項2号にいう「個人識別符号」は、マイナンバー、旅券番号、免許証番号など、公的機関が個人に対して発行している書類の番号を指すというイメージで良いと思います。
条文上、民間が発行する番号も当たりそうな気がします。たとえば、生命保険の保険証券番号も当たりそうな気がします。
しかし、ガイドライン(通則)を見る限り、民間が発行する番号が「個人識別符号」にあたるという記載はありませんでした。


また、繰り返しとなりますが、公表されているか否かを問いません。すなわち、マイナンバー制度ができたころ、マイナンバー制度に反対する方が、敢えてご自身のマイナンバーを公開したという事例がありました。敢えてご自身で公開されたとしても、個人情報にあたるので、むやみにその方のマイナンバーを拡散してはいけないということになります。

(以上の内容は、個人情報保護法ガイドライン(通則編)2-2を参考にしました。)

「個人識別符号」のイメージもつかめていただけたでしょうか。
個人情報保護法2条1項、2項を読むと、この世は個人情報だらけという感じがします。

次回は、個人情報の取得についてお話したいと思います。