民法改正講義案12(連帯債務・連帯債権・連帯保証5)

5 意思表示による不可分債権は廃止

 【第428条】
次款(連帯債権)の規定(第四百三十三条及び第四百三十五条の規定を除く。)は、
債権の目的がその性質上不可分である場合において、数人の債権者があるときについて準用する。

(1)解説

旧法では、「債権の目的がその性質上又は当事者の意思表示によって不可分である場合」とされていました。しかし、「当事者の意思表示によって不可分」という文言が削除されました。

(2)そもそも、不可分債権とは

不可分の目的物の給付を請求する債権を複数の人が有する場合を不可分債権といいます。

AとBの2人がお金を出し合ってCさんからマンションを買ったとします。

マンションは分けられません。したがって、Cさんとしては、AさんかBさんに鍵を渡せば引き渡したことになります。別に、鍵を2つ作って、AさんにもBさんにも鍵を渡す義務までは負いません。

「あれ?それって連帯債権では?」と思った方、素晴らしいです。

しかし、もう一度、連帯債権の条文を見てください。

【第432条】
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって
数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を
請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

「性質上可分である場合」と書いてありますね。したがって、不可分な場合には、連帯債権にはなれないのです。