民法改正講義案12(連帯債務・連帯債権・連帯保証4)

4 連帯債権につき、条文ができた

【第432条】
債権の目的がその性質上可分である場合において、法令の規定又は当事者の意思表示によって
数人が連帯して債権を有するときは、各債権者は、全ての債権者のために全部又は一部の履行を
請求することができ、債務者は、全ての債権者のために各債権者に対して履行をすることができる。

(1)そもそも連帯債権とは

複数の債権者が、それぞれ、償務者に対して全部または一部の履行を請求でき、1人の債権者が弁済を受ければ、総債権者について債権が消滅するという債権です。

債務者(義務を負っている人)から見ると、何人の債権者がいるけれども、そのうちの1人に義務を果たせば、他の人には義務を果たさなくてもよいというものです。

(2)具体例?

ここで具体例を挙げられれば良いのですが、なかなか的確な具体例を挙げるのは難しいです。

たとえば、Aさんが、Bさんから、「高級なツボを預かってくれ。」と言われて、預かったとします。その後、Bさんが死亡してしまいました。Bさんには、C・Dという子どもがいたとします。

この場合、Aさんとしては、CDの遺産分割協議を待って、ツボの所有者が決まった後にツボを返すのが一番無難です。しかし、遺産分割協議がまとまるまでツボを預かっていろというのも、Aさんにとって酷です(Aさんは、Bさんに義理はあっても、CDに義理はないからです。)。

そこで、Aさんは、遺産分割協議がまとまる前でも、CかDのどちらかにツボを返せば足りるとされています。この状態を、連帯債権といいます。

このように、なかなか「連帯債権」を想定するのは難しいのです。そのため、旧法には規定がありませんでした。しかし、新法には条文ができたのです。