【判例速報】最高裁・建物の持分と借地借家法14条の建物買取請求権/知財高裁・漫画の翻案否定ほか計4件(2026年8月29日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告のものは4件です(インターネット関連分野に直接該当するものは0件。ただし、うち2件は著作権のネット配信・EC販売の実務に参照価値があります)。
【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日から本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。そのため、裁判年月日ベースで直近の新着一覧(下級裁判所(速報)・新着統合・知的財産裁判例集の3本)を確認し、当サイトの既報分との重複を個別に除外しています。
1.最高裁判所第二小法廷 令和8年8月28日判決(令和6(受)2169・建物買取代金請求事件/上告棄却)
事案の概要
土地賃借人Aの相続人から、当該土地上の区分所有建物の専有部分の持分4分の3を購入した上告人が、土地賃借権の持分譲渡について土地所有者(被上告人)の承諾を得られなかったとして、借地借家法14条に基づき建物買取請求権を行使し、持分の時価相当額および遅延損害金の支払を求めた事案です。
原審は東京高等裁判所令和6年8月1日判決(令和6(ネ)714)。
判断の要旨
上告棄却。「賃借権の目的である土地の上にある建物の持分について、借地借家法14条所定の建物買取請求権は成立しない」と判示しました。理由は次のとおりです。
- 持分についての買取請求を受けると、賃借権設定者が当該建物の共有関係に巻き込まれることになり、処分の自由を失うなど重大な不利益を被るおそれがあること
- 持分に関する投下資本の回収は、共有物分割請求をすることによって図り得ること
- 裁判官全員一致。尾島明裁判官の補足意見(借地借家法19条1項の解釈との整合性について、適用場面と効果が異なれば解釈が異なることは特に不自然不合理ではない旨)が付されています。
実務上のポイント
借地上建物の「持分のみ」を取得した者は、承諾が得られなくても借地借家法14条による救済を受けられないことが最高裁レベルで示されました。借地権付き建物の共有持分の売買・相続分割の場面では、事前の承諾取得または借地借家法19条1項(裁判所の許可)ルートの検討が実質的な選択肢となります。
2.知的財産高等裁判所(第3部) 令和8年8月18日判決(令和8(ネ)10005・損害賠償請求控訴事件/控訴棄却)
事案の概要
控訴人Xが、被控訴人株式会社KADOKAWAの出版・電子出版した漫画が自己の漫画著作物についての複製権、翻案権、出版権、公衆送信権および氏名表示権を侵害するとして、合計15億9610万円の損害賠償を求めた事案です。
原審は東京地方裁判所(令和5(ワ)70689)で請求棄却。
判断の要旨
控訴棄却。漫画の著作物の対比は「各コマの具体的な表現」を対象とすべきであり、控訴人の主張はプロット構成やキャラクター設定というアイデアに属する部分の共通性を指摘するにとどまり、具体的な表現上の類似性を示していないと判断されました。葬儀シーン、写真の損壊、お守り等の共通点はいずれも表現それ自体ではなくアイデアの範囲内であり、弁当の具体的描写(形状・配置・仕切りの有無等)は全く異なるとされています。表現上の本質的特徴を直接感得できないため、依拠性の判断には至らないとしました。
控訴人が主張した「映画的シークエンス」としての複数コマ一連の対比についても、各コマの具体的表現の創作性の再現箇所を特定せず漫画の筋書を抽出した類似性をいうにすぎないとして失当としています。
実務上のポイント
電子出版・公衆送信を含む漫画・イラストの模倣クレームにおいて、「筋書き・設定が似ている」型の主張は失当とされることが改めて示されました。ネット上の二次創作・模倣に関する相談では、コマ単位での具体的表現の再現箇所を特定できるかどうかが主張構成の分水嶺となります。
なお、電子出版であることの特殊性についての具体的な法的判断は、判決文には記載されていません。
3.知的財産高等裁判所 令和8年8月18日判決(令和8(ネ)10029・損害賠償等請求控訴事件/控訴棄却)
事案の概要
株式会社ソラスタイルズ(控訴人)が、株式会社ルートート(被控訴人)の販売するハンドバッグが自社商品の形態を模倣したものであるとして、不正競争防止法2条1項3号に基づき損害賠償等を求めた事案です。控訴人商品はパイピングで装飾された略二等辺三角形状を特徴とするバッグです。
原審は東京地方裁判所(令和6(ワ)70219)で請求棄却。
判断の要旨
控訴棄却。両商品には多くの共通点があるものの、被控訴人商品の背面に存在する外部ポケット(「ルーポケット」)は商品全体の形態に相応の影響を与える重要な相違点であるとされました。
- トートバッグにおいて正面・背面は固定的なものではなく、需要者は好みや使用シーンに応じて両面のいずれもが正面にも背面にもなり得ると認識すること
- 外部ポケットは容易に視認し得るもので、需要者および取引者の注意を相応に惹く部分であること
- 外部ポケットを含む背面形態はありふれたものではなく、着想が必ずしも容易ではないこと
- インターネット販売サイトにおいて被控訴人商品の正面・背面の画像が併せて掲載され、「外付けのルーポケットがデザインのポイント!」と記載されている事実も踏まえられていること
結論として、両商品の形態は実質的に同一とはいえず、不正競争に該当しないとされました。
実務上のポイント
EC上の商品ページの画像構成および訴求文言が、商品形態の要部認定・需要者の注意を惹く部分の認定資料として用いられている点が実務的に重要です。ネット通販における模倣品対応では、自社・相手方双方の商品ページ(画像・説明文)の証拠保全が初動として不可欠となります。
4.知的財産高等裁判所(第3部) 令和8年8月18日判決(令和7(ネ)10070・特許権侵害差止等請求控訴事件/原判決取消)
事案の概要
被控訴人株式会社ホタルクスが、「ランプ」に関する特許第6944719号および特許第7227646号に基づき、控訴人細渕電球株式会社の製品の製造・販売の差止めと廃棄を求めた事案です。
原審(東京地方裁判所・令和6(ワ)70139)は被控訴人の請求を認容しました。
判断の要旨
原判決取消、被控訴人の請求を全部棄却。主な争点は、控訴人製品が本件各発明の技術的範囲に属するか、および本件各発明に進歩性があるか(特許法29条2項)でした。本件発明1-1は乙10発明(特開2015-69708公報)に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、相違点3つはいずれも既知技術の組合せにより容易に想到し得ると判断されています。本件各特許は特許法123条1項2号により無効とされるべきものであり、被控訴人は特許権を行使することができないとされました。
実務上のポイント
第一審で侵害が認められた事案が、控訴審で進歩性欠如を理由に全面的に覆された事例です。無効の抗弁の主張・立証を控訴審段階で組み替える際の実例として参照価値があります。
精査状況について
- 上記4件はいずれも詳細ページの「判示事項」「裁判要旨」「参照法条」欄が空欄または一部のみの記載であり、本記事の要旨は判決文PDF(4については判決要旨PDFを含む)の記載に拠っています。原典(courts.go.jp掲載のPDF)は確認済みです。
- 下級裁判所(速報)一覧は先頭30件のみが静的に取得可能であり、31件目以降は本日の確認範囲に含まれていません。
出典
本記事は、裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)掲載の以下の公式ページに基づいています。

