弊所FAQ21~和解と示談は概ね同じ~

Q 和解と示談の違いがよく分かりません。

A 確かに、和解は民法に定められており、示談は民法に定めがないという違いはあります。しかし、和解と示談は、効力としては大体同じです。

【解説】

某有名人の方の案件のためか、和解と示談の違いに興味をお持ちになった方も多いと思われます。

しかし、和解と示談は大体同じものです。

まず、和解は、民法に規定があります。

(和解)
第六百九十五条 和解は、当事者が互いに譲歩をしてその間に存する争いをやめることを約することによって、その効力を生ずる。

これに対し、示談の定義を示した条文は、存在しません。
しかし、示談は、和解の一種として理解するのが一般的とされています(新注釈民法14p648、p664)。

したがって、和解と示談は概ね同じものと言って差支えありません。

ここで、「和解は『互いに譲歩をして』とあるので、『互いに譲歩』をしなければ、和解といえないのではないか?」という疑問を持った方もいらっしゃると思います。

ただし、ここでいう「互いに譲歩」の定義は、かなり広く解釈されています。

たとえば、XさんがYさんに100万円を請求し、Yさんが「1円も払わない」と争っていたとします。


ここで、YさんがXさんに50万円を支払って争いをやめる旨の合意をした場合、XさんもYさんも50万円ずつ互いに譲歩したことになるので、「和解」です。

しかし、半々でなくても、互いに譲ったことになります。
たとえば、YさんがXさんに10万円を支払って争いをやめる旨の合意をした場合も、Xさんは90万円譲歩し、Yさんは10万円を譲歩したことになるので、「和解」です。

もっといえば、YさんがXさんに1円を支払って争いをやめる旨の合意をした場合も、Xさんは99万9999円譲歩し、Yさんは1円を譲歩したことになるので、「和解」です。

ここまで来ると、「互いに譲歩」の概念が広すぎて、わざわざ「互いに譲歩」したか否かを検討する意味に乏しいことにお気づきになると思います。
つまり、「互いに譲歩」の内容はともかく、「争いをやめることを約する」合意があった否かが、和解成立の分かれ道ということになります。

逆にいえば、「争いをやめることを約する」合意がなければ、和解とは言えません。示談とも言えません(もちろん、法律の条文に「示談」の定義がない以上、示談と呼ぶことは違法ではないかも知れません。しかし、一般的に見て、「争いをやめることを約する」合意がないのに「示談」と呼ぶことは極めて稀です。)。

たとえば、先ほどの例で、YさんがXさんに50万円を支払う合意だけした場合には、互いに譲歩したかも知れませんが、争いをやめる合意がない以上、和解とは呼べませんし、示談と呼ぶことも稀です。
単に「金銭を支払う合意」とか、「弁済契約」とでも呼ぶことになります。

以上のとおり、和解も示談も大差はないというお話でした。