ハンコについて本気出して考えてみた3~ハンコに信頼性を与えた判例~

さて、前回までで、
・本人がハンコを捺していれば、『間違いなく本人が作成しただろう』と思ってもらえる。
・しかし、ハンコの印影だけを見ても、本人がハンコを捺したかどうかなど分からない。
・でも、やはり、ハンコを信頼する人は多い。なぜだろう。

というお話をしてきました。

実は、昭和39年5月12日に、最高裁判所が、「印影が本人のハンコによって捺されたものであれば、本人がハンコを捺したものと推定する。」という趣旨の判決を出したのです。

ここでいう「本人のハンコ」とは、文字どおり、本人が所有するハンコという意味です。民事訴訟法228条4項のようなややこしい解釈はしません。

つまり、本人が所有するハンコの印影であることが分かれば、たとえ近くに本人がいなくて本人確認ができなくても、本人がハンコを捺しただろうと思ってくれるという訳です。

本人がハンコを捺しただろうと思ってもらえるのであれば、民事訴訟法228条4項の適用があり、文書も本人が作ったのだろうと思ってもらえるというわけです。

本人の署名か否かを判断することと、本人が所有するハンコか否かを判断することを比べたら、本人が所有するハンコか否かを比べる方がまだ楽ですよね。
本人の署名には形がないうえに、毎回微妙に変わるかも知れませんが、本人が所有するハンコは物体なので、そう簡単には変わりません。

そのため、署名よりも、ハンコの方がむしろ信頼性が高いということになり、現在に至るわけです。

ここまで申し上げると、「『本人が所有するハンコ』とは実印のことだろうか。」と思われる方もいらっしゃるでしょう。
その点については、「8割方正解です。」と申し上げておくにとどめ、次回に続きます。