就業規則の休職条項をご確認ください

顧問弁護士というと、どのようなイメージでしょうか。

「簡単な相談に、すぐ乗ってもらえる。」「契約書のチェックを依頼する。」などが多いと思われます。
もちろん、このイメージに間違いはありません。簡単な相談にすぐ対応する・契約書のチェックをするというのは、顧問弁護士の任務だと思います。


ただ、そうなると「今、相談に乗ってもらいたいようなことはないし……。」とか、「今、契約で困っていることはないし……。」ということで、とりあえず弁護士と距離を置きたくなる方もいらっしゃいます。

そのような方にも、ご提案して喜ばれているのが、就業規則をはじめとする内部規則の見直しです。
というのも、労働紛争の何割かは、就業規則に対する解釈の違いが遠因になっているような印象を受けているからです。

就業規則というのは、労働基準監督署に届出をすることになっています。
届出をすると、就業規則に受領印を押印してくれます。
この受領印というのは、最低限の形式が守られているということを意味するにすぎず、就業規則の内容が適法であることを保証しません。
つまり、就業規則の通りに運営していたとしても、裁判で不適法とされる可能性はあるわけです。

例えば、労働紛争において「弊社は、労働基準監督署のお墨付きを得た就業規則に基づいて運営しています。労働基準監督署の受領印もあります。したがって、何ら不適法なことはしておりません。」という主張をしたとしても、認められる可能性は、かなり低いのです。
労働基準監督署の受領印は、就業規則が適法であることの証明にはならないからです。

そのため、労働基準監督署の受領印がある就業規則といえども、紛争リスクが潜んでいる可能性があるわけです。そこで、私が、法的な側面から就業規則の見直しをさせていただくと、労働紛争になるリスクが減ったということで、喜んでもらえることが多いです。

さて、一つ簡単なチェックをご提案いたします。

御社の就業規則の休職条項をご覧ください。

休職条項において、休職となる場合として、「逮捕、勾留された場合」が挙げられていることが多いと思います。
しかし、私の経験では、労働紛争になる会社の就業規則は、少なくない割合で、「逮捕、拘留された場合」と記載されています。
そして、「勾留」と「拘留」は、身体拘束されるという限りでは同じですが、法的な意味は全く異なります。

「勾留」は、犯罪を行ったと疑われている方について、証拠隠滅を防止するために、身体拘束することです。
「拘留」は、刑事裁判において犯罪を行ったと認定された方について、刑罰として身体拘束することです。
つまり、「勾留」は刑罰ではないですが、「拘留」は刑罰です。

このような「勾留」と「拘留」の違いについては、私だったら、突っ込みたくなります。
逆に言えば、「勾留」とすべきところ、「拘留」になっていると、弁護士の目が入っていない可能性があり、ひいては、法的リスクが潜んでいる可能性があると思われます。

ということで、もし、御社の就業規則の休職条項が、「逮捕、拘留……」になっていたら、とりあえず、身近な弁護士のところに、就業規則を持っていって、相談なさる方が良いと思います。相談なさることによって、単なる誤字(誰にでも誤変換はあります。)なのか、実は法的リスクが潜んでいるのかがわかるはずです。

ご検討ください。