民事IT裁判FAQ2~IT裁判の法的立ち位置は?~
※民訴法改正により、IT裁判は、弁論準備や進行協議期日でも行えるようになりました。したがって、本ページは陳腐化しました。
詳しい内容は、FAQ22をご確認ください。以下の記載は、過去の解釈例として読んでください。
Q そもそも、IT裁判は、民訴法でいうと何にあたるのですか?
A 書面による準備手続(民訴法175条)としている裁判所が多いようです。進行協議期日(民訴規則95条・96条)とはしていないようです。
Q 「書面による」なのに、なぜIT裁判ができるのですか?
A IT裁判は、民訴法176条3項「裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」にあたります。
【解説】
これまでは、訴訟提起して、原告と被告双方に弁護士が就くと、「弁論準備手続」(民訴法168条)に付されることが一般的でした。
しかし、IT裁判においては、書面による準備手続として行われることが多いです。
というのも、弁論準備手続で、「裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」を使う場合、原告と被告のいずれかは、裁判所の建物に出向かなければなりませんでした(民訴法170条3項ただし書き)。
たとえば、弁論準備で被告側の弁護士が電話会議となった場合、原告側の弁護士は、裁判所の建物に出向く必要があるという経験をされた先生方は、多いと思います。
これでは、IT裁判の意義が薄れてしまいます。
そこで、原告も被告も出頭しない方法として、書面による準備手続が用いられることになりました。
書面による準備手続ということであれば、民訴法170条3項ただし書きのような条文がないので、原告も被告も出頭不要ということになります。
これにより、たとえ、原告であっても、裁判所に出頭しないで裁判が進められるということになります(私の考えすぎかも知れませんが、原告側から、「弁論準備に付して電話会議にしてほしいと言いにくかったです。)。
ところで、弁論準備でも「裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすることができる方法」という文言がある以上、原告と被告のいずれかが出頭すれば、IT裁判できるのでは?とお考えになった方もいらっしゃるでしょう。
まさしく、そのとおりです。例えば、原告側がIT裁判を希望し、被告側がIT裁判を拒否した場合(2022年4月時点では、IT裁判は希望制です。)、被告が裁判所に出頭することにより、原告はIT裁判で、弁論準備として参加できることになります。
現に私も、同様な弁論準備を体験したことがあります。
ただ、双方不出頭という、IT裁判の最大のメリットを生かすためには、書面による準備手続として行わざるを得ないということになります。