児童虐待対応の大枠1~一時保護について~

児童虐待に関するニュースは、途切れなく報じられます。
そして、「児童相談所」という単語も良く報じられます。
ただ、児童相談所に何ができるかということは、あまり知られていないような気がします。

ということで、静岡県中央児童相談所の非常勤職員の経験もある私が、少しだけ児童虐待について触れたいと思います。

さて、児童虐待に関し、児相がどのように対応するかを大雑把に申し上げると、以下のとおりです。

①虐待を認知する。
②虐待されている児童の安全を確保する。
③児童に関し相応しい対応をする。

もちろん、いきなり③の手段が取れるのが理想といえましょう。しかし、児童にとって何が相応しいといえるかは、ある程度の調査をしなければなりません。
そこで、児相が①虐待を認知したら、とりあえずは②安全を確保したうえで、調査をし、③児童に関し相応しい対応をとることになっています。

そして、①虐待の認知については、皆様が想像されているとおりかと存じます。
近所の人からの通報や、児童本人からの通報、あるいは、学校や病院からの通告ということが考えられます。
なお、虐待している本人からも通告があるそうです。たとえば、「どうしても子に手を出してしまう」と悩んで通告する親もいると聞きます。

通告があっても、児童の身から危険が去っていることはありえます。
たとえば、暴力を振るう両親を見かねて、祖父母が保護してあげているということはありえます。
しかし、危険が去っていない場合はどうするのでしょうか?

その場合は、「一時保護」をするのです。
「一時保護」という言葉は、耳にしたことがある方も多いかと存じます。
そこで、「一時保護」についてご説明いたします。

一時保護とは、文字どおり、児童を一時的に、安全な場所へ保護することです。
一時保護所と呼ばれる保護所で保護されることが多いようです。
ただ、体調が悪い児童の場合には、病院で一時保護されることがありますし、乳児の場合には乳児院で一時保護されることが多いです。
里親さんに預けられることもあります。
これらのように、一時保護所以外での一時保護の場合には「一時保護委託」と呼ばれます。

なお、時々勘違いされるのですが、子どもが一時保護されたとしても、親権者は親権を喪うわけではありません。
児相長は、一時保護をした児童に対して必要な措置を採ることができ(児福法33条の2第2項)、親権者はその措置を不当に妨げてはいけないとされるだけです(児福法33条の2第3項)。
したがって、不当に妨げない範囲では、親権者として振る舞うことができます。
ご両親が勘違いするのは無理もありません。ただ、一時保護委託先までもが、親権者に対して「一時保護された以上、あなたは親権を喪ったのだ」と言い放つ例が散見されます。
厳密にいえば誤りです。

さて、ここまでで、一言も「裁判所」という単語が出てきていないことにお気づきでしょうか。
そうです。一時保護自体は、裁判所の承認なくできます。つまり、児相の判断だけで一時保護できるのです。
これは、児相に対し、迅速な保護をし、いち早く児童の身の安全を図ることが期待されているからだといえます。

ただ、そうはいっても、児相の判断に誤りがあったら、どうするのでしょうか?

次回は、一時保護について児相の判断に誤りがあった場合について、お話します。