交通事故案件の肝3~1日あたりの休業損害は90日で割らずに……~

昨日、さらっと、「『必要性』『相当性』のある通院に対しては休業損害が認められる。」と書きました。
休業損害は、勤務先が「休業損害証明書」を提出してくださる限り、比較的容易に保険会社も認めてくれます。
しかし、1日あたりの休業損害の金額については、注意が必要です。

今日は、「1日あたりの休業損害を算出する場合には、90日で割らずに稼働日数で割るべき」ということを申し上げたいです。

休業損害を計算する場合、事故前3か月の給料の平均を出してから、休業期間を掛けるというのは、比較的よく知られています。

では、4月1日に交通事故に遭って、2か月間かけて30回通院したという場合、休業損害はどれくらいになるでしょうか。
なお、計算を分かりやすくするため、1回の通院あたり半休を取ったものとします。つまり、15日分の休業損害が問題になります。

3か月分の給料を合計して90で割り、15を掛ければ良いのではないかと思われる方も多いと思います。現に、保険会社は、90で割って計算し、提案してきます。

しかし、休業損害とは、1日あたりの給料の損害額です。90で割って良いのでしょうか。
たとえば、1月分の給料が20万、2月分の給料が21万、3月分の給料が25万円の方の場合、3か月分の給料合計を90で割ると、商は7333円です。この方の1日あたりの給料は、7333円なのでしょうか?

もちろん、この方が毎日休みなく働いている場合は、7333円です。しかし、実際には、月に何日か休んでいるはずです。たとえば、1月の稼働日数が20日、2月の稼働日数が21日、3月の稼働日数が25日で、合計66日だった場合、この方の1日あたりの給料は、1万円(=66万円÷66日)です。

つまり、稼働日を考慮せずに90で割ると、休んでいる日についても働いたものとみなして1日あたりの給料額を算定してしまうことになります。
90で割っては、1日あたりの給料を正確に反映したとはいえません。したがって、休業損害を計算するときは、90ではなく、稼働日数で割るべきなのです。

以上のとおり説得すると、保険会社も、稼働日数で割ることに納得してくれることが多いです。

もし、皆様が交通事故に遭われて、休業損害だけが争いになった場合、この記事のように、保険会社を説得してみてください。
休業損害以外も争いたくなったら、弁護士に相談してください。