相続法が変わります13
相続人でなくても寄与分が認められる可能性あり
【1050条】
1 被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。
2 前項の規定による特別寄与料の支払について、当事者間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、特別寄与者は、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。ただし、特別寄与者が相続の開始及び相続人を知った時から6箇月を経過したとき、又は相続開始の時から1年を経過したときは、この限りでない。
1 ひとこと解説
旧法では、相続人に限り、寄与分が認められていました。そのため、例えば、義父の面倒を看てきた長男の配偶者には、寄与分が認められなかったのです。
しかし、それは不公平ということになり、相続人でなくても親族であれば、寄与分が認められることがあるとなりました。
2 例
AさんはBさんと結婚していました。Bさんは、無償でAさんの父親の介護をしてきました。そのため、介護費用は低廉に抑えられ、Aさんの父親にはそれなりの現金が遺ったのです。
Aさんの父親が死亡した場合、Bさんは、Aさんの父親の財産について特別寄与料を請求できる可能性があります。
3 補足
ア 「6か月」の方の期間制限は、相続開始のみならず、相続人を知ったときが起算点となります。これは、相続放棄をした場合を考慮しているようです。
イ 「無償」と書かれているので、対価を受け取っていると、寄与分は一切認めらないことになります。
たとえば、被相続人の事業を手伝っており、適法な対価を受け取っている場合には、寄与分は認められないことになります。
すなわち、「Aの父が、生前、ベンチャー企業を立ち上げた。Aの父は当該企業の株式を100%持っていた。Aの配偶者Bは、Aの父のベンチャーを手伝っていた。Bの働きもあって、当該ベンチャー企業は急成長し、株価は100倍にもなった。被相続人Aの父は、当該株式を全て現金化した直後に死亡した。」という場合、Bの働きで株価が上昇したことを立証できたとしても、Bが対価を受け取っている限り、寄与分は認められないと思われます(私見)。
ウ 相続の開始から1年で特別寄与料の請求権を失います。弁護士の感覚からすると、1年は極めて短いです。なお、条文の文言からすると時効期間ではなく、出訴期間のようなので、時効の完成猶予・更新が適用されないと思われます。
エ 新法によって、特別寄与分が認められる可能性のある方は、相続人から親族へと広がりました。ただ、特別寄与分が認められるハードルは、旧法と変わりありません。したがって、単に「義父のお世話をした」と立証するだけでは不十分であり、「義父のお世話をすることによって、介護費用○○円が浮いた。」という立証が必要になります。