民法改正講義案11(債権譲渡2)
2 譲渡制限債権が、悪意重過失の者に譲渡された場合、債務者は譲渡人に履行できる
【第466条】 3 前項に規定する場合には、譲渡制限の意思表示がされたことを知り、 又は重大な過失によって知らなかった譲受人その他の第三者に対しては、 債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を 消滅させる事由をもってその第三者に対抗することができる。 4 前項の規定は、債務者が債務を履行しない場合において、同項に規定する第三者が 相当の期間を定めて譲渡人への履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、 その債務者については、適用しない。
(1)ひとこと解説
譲渡制限債権であることにつき、悪意重過失の者が譲り受けた場合、債務者は、譲受人への履行を拒むことができます。
(2)詳細解説
譲渡禁止債権であることにつき、悪意重過失の者が譲り受けた場合、債務者は、譲受人への履行を拒むことができます。つまり、譲渡人に履行できるわけです。
そもそも、譲渡禁止特約を付けたということは、債務者としては、譲渡人に対してのみ履行したいと思っていたはずです。したがって、譲渡人に対して履行できるという、この条文があれば、債務者の保護としては十分といえます。
そのため、もし、譲渡人にすら履行しないというのは、ただのわがままといえます。そこで、債務者が譲渡人に履行しなかった場合には、譲受人は、債務者に対し、「自分に履行せよ」と請求できます。
なお、悪意重過失であっても、債権譲渡は有効なので、債権者は、あくまで譲受人です(466条2項)。
もし、債務者が、譲渡人に履行した場合、譲受人は譲渡人から履行を受けることになる。条文がないので、おそらく、不当利得構成と思われる(私見)。
(3)補足
強制執行の場合には、強制執行をした債権者が悪意重過失であっても、そもそも履行を拒めない。
【第466条の4】 第四百六十六条第三項の規定は、譲渡制限の意思表示がされた債権に対する強制執行をした差押債権者に対しては、適用しない。
例:Aさんは、Bさんに対し、甲債権(譲渡制限特約つき)を持っているとします。Aさんの債権者Dさんは、譲渡禁止特約につき、悪意重過失であったとします。この場合、Dさんは甲債権を差し押さえできます。
(4)さらなる補足
悪意重過失の譲受人に対する債権者が、譲受債権を差し押さえた場合には、債務者は履行を拒むことができます。
【第466条の4】 2 前項の規定にかかわらず、譲受人その他の第三者が譲渡制限の意思表示がされたことを知り、又は重大な過失によって知らなかった場合において、その債権者が同項の債権に対する強制執行をしたときは、債務者は、その債務の履行を拒むことができ、かつ、譲渡人に対する弁済その他の債務を消滅させる事由をもって差押債権者に対抗することができる。
例:Aさんは、Bさんに対し、甲債権(譲渡制限特約つき)を持っている。Aさんは、Cさんに甲債権を譲渡した。Cは、甲債権の譲渡制限特約につき、悪意重過失であった。Cさんに債権者Eさんがいて、Eさんが甲債権を差し押さえたとします。
この場合、BさんはEさんに対し履行を拒むことができるのです。(3)とは微妙に異なるのでご注意ください。