【判例速報】東京地裁・見守りGPS特許と無効の抗弁/福岡高裁・拳銃発射事件の無罪破棄(2026年8月8日)

裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、当サイトの過去の速報で未報告の3件を取り上げます。うちインターネット関連(発信者情報開示・プロバイダ責任制限法/情報流通プラットフォーム対処法・ネット上の名誉毀損/プライバシー侵害)に直接該当するものは0件でしたが、1件目はIoT位置情報サービスに関する特許事件で、ネット系サービス事業者の実務に関わります。

【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日〜本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。本記事は、新着一覧(下級裁判所(速報)/新着統合一覧/知的財産裁判例集)に掲載されているもののうち、当サイトの過去の速報と突合して未報告のものを対象としています。
また、いずれの詳細ページも「判示事項の要旨」「裁判要旨」欄が空欄のため、以下は判決文PDF(原典)に基づく要約です。


1. 東京地裁 令和8年7月3日判決 ― 見守りGPSサービスと特許無効の抗弁

  • 裁判所:東京地方裁判所(裁判長 澁谷勝海、本井修平、塚田久美子)
  • 裁判年月日:令和8年7月3日
  • 事件番号:令和6(ワ)70400(特許権侵害に基づく損害賠償請求事件)
  • 権利種別:特許権(特許第7525968号「情報処理端末、情報処理装置、情報処理方法、情報処理プログラム」)

事案の概要

原告ビーサイズ株式会社が、被告株式会社MIXIのGPS見守りサービス「みてねみまもりGPS」の製品・サーバ・プログラムが本件特許権を侵害するとして、1億円の損害賠償を請求した事案です。

判断の要旨

請求棄却。裁判所は、被告製品等が訂正発明の技術的範囲に属することは認めました。しかし、先行する「みもりMR-02A」サービス(乙2発明)に基づき当業者が容易に想到できたとして進歩性を欠き、本件特許は無効にされるべきものであるから、原告は特許権を行使できないとしました。

実務上のポイント

  • 技術的範囲への属否を認めながら、無効の抗弁(特許法104条の3)で請求を全部棄却した事例です。
  • IoT・位置情報・見守り系のネットサービスでは、自社の先行サービスや競合の既存サービスが後願特許の進歩性を否定する主引例となり得ることを示しており、ネット系サービス事業者の特許戦略・警告対応で参考になります。

※詳細ページの「判示事項の要旨」「裁判要旨」欄は空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。

出典:裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF


2. 福岡高裁 令和8年7月3日判決 ― 無罪判決の破棄と共謀共同正犯の認定

  • 裁判所:福岡高等裁判所 第2刑事部
  • 裁判年月日:令和8年7月3日
  • 事件番号:令和7(う)35(銃砲刀剣類所持等取締法違反、建造物損壊、器物損壊)
  • 原審:福岡地方裁判所小倉支部 令和5(わ)273

事案の概要

暴力団F組若頭であった被告人が、みかじめ料の支払を拒んだ建設会社への報復として、平成23年5月、福岡県内の居宅に拳銃5発を発射し、玄関ドアを貫通させ屋内の壁・鏡を損壊したとされる事案です。原審は共犯者Aの供述の信用性を否定し、無罪としていました。

判断の要旨

原判決破棄・自判、懲役8年(未決勾留日数220日算入)。高裁は、本件が組長不在下におけるF組の組織的犯行であり被告人の関与なしには実行不可能であるとし、A供述の信用性は外形的事実から裏付けられると認定して、共謀共同正犯の成立を認めました。

実務上のポイント

  • 共犯者供述の信用性判断について、原審の否定判断を控訴審が客観的・外形的事実による裏付けを理由に覆した事例です。
  • 無罪判決に対する検察官控訴の審理方法(事実誤認の審査)の実例として参考になります。インターネット関連業務への直接の影響はありません。

※詳細ページの「判示事項の要旨」「裁判要旨」欄は空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。

出典:裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF


3. 福岡高裁 令和8年7月9日判決 ― 偽造教員免許状の行使と量刑

  • 裁判所:福岡高等裁判所 第3刑事部
  • 裁判年月日:令和8年7月9日
  • 事件番号:令和8(う)140(偽造有印公文書行使)
  • 原審:福岡地方裁判所 令和7(わ)1257

事案の概要

被告人が、福岡県内の小中学校の補助教員採用に際し、有効な中学校教諭免許を取得しているように装うため、岐阜県教育委員会作成名義の偽造免許状の写しを令和3年3月と令和7年1月の2回にわたり提出・行使した事案です。

判断の要旨

控訴棄却(当審未決勾留日数中50日を原判決の刑に算入)。弁護人は原判決の懲役3年6月が重過ぎると主張しましたが、高裁は、常習性は責任非難の程度の高さを示すものであり、同種前科後の再犯であって2回の機会に危険性を現実化させた点で、前科の各犯行よりも強く非難することが不当とはいえないとして、量刑を相当と判断しました。

実務上のポイント

  • 資格詐称型の公文書偽造・行使事案における量刑事情(常習性・同種前科・反復性)の評価枠組みを示すものです。インターネット関連業務への直接の影響はありません。

※詳細ページの「判示事項の要旨」「裁判要旨」欄は空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。

出典:裁判例詳細(裁判所ウェブサイト)判決文PDF


出典

本記事は裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)に掲載された公式情報に基づいて作成しています。判決文の全文は各出典リンクからご確認ください。

浅井裕貴弁護士(静岡県弁護士会)

静岡市清水区出身の弁護士。一橋大学・中央大学法科大学院卒業、静岡県弁護士会所属。ネットの誹謗中傷・発信者情報開示請求(意見照会・トレント対応を含む)、相続・遺言、交通事故案件に注力。基本情報技術者の知見を活かし、IT・インターネット分野の法律問題に対応している。