【判例速報】東京高裁・景表法措置命令取消、知財高裁・営業秘密とネット報道ほか計5件(2026年8月3日)
裁判所ウェブサイトの新着裁判例のうち、実務上重要な5件(うちインターネット関連3件)を取り上げます。
【注記】裁判所サイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「昨日〜本日に公開された分」を厳密に特定することはできません。本記事は、裁判所ウェブサイトの新着一覧(下級裁判所速報・統合新着・知的財産裁判例集)に掲載されているもののうち、当サイトの過去の速報で未報告のものを対象としています。裁判年月日は令和8年6月10日〜6月30日であり、判決日からは2週間を超えていますが、新着一覧掲載分として今回新たに確認したものです。なお、裁判年月日が直近2週間以内(令和8年7月20日以降)の掲載分は、いずれも既報(7月22日・7月27日各判決)であり、新規のものはありませんでした。
1. 知財高裁・営業秘密とインターネットニュース報道(不正競争防止法)
知的財産高等裁判所第2部/令和8年6月29日判決/令和8(ネ)10004(原審:東京地方裁判所 令和5(ワ)70401)/損害賠償請求控訴事件/権利種別:不正競争
事案の概要
メーカーである原告が、インターネットニュースサイトに掲載された記事をめぐり、元従業員、寄稿者および報道各社に対し、営業秘密の不正取得・使用・開示(不正競争防止法2条1項4号〜8号)等を理由として、総額1億1000万円の損害賠償を請求した事案。
判断の要旨
元従業員(記者に資料を提供した者)についてのみ66万円の賠償責任を認め、報道各社および寄稿者に対する請求はいずれも棄却。元従業員については「見せしめ」の意図など悪質性を認定しつつ、違法性の程度は比較的低いと評価。報道各社については、警告受領後の取材・報道を含めて正当な報道活動の範囲内であるとし、記事のインターネット掲載自体も国民の知る権利に資するものと評価した。
実務上のポイント
営業秘密がネットメディアを経由して開示された場合における、不競法上の責任と報道の自由・表現の自由との調整枠組みを示した事例。ネット記事の削除請求・損害賠償請求を検討する際、情報提供者(元従業員等)と媒体側とで責任判断が分かれ得る点が実務上重要です。
2. 東京高裁・景品表示法の措置命令取消(優良誤認・不実証広告規制)
東京高等裁判所第11民事部/令和8年6月10日判決/令和7(行コ)263(原審:東京地方裁判所 令和6(行ウ)141)
事案の概要
糖質カット炊飯器に関する「美味しさそのまま」「糖質45%カット」等の広告表示について、消費者庁長官が景品表示法5条1号(優良誤認表示)・7条2項(不実証広告規制)に基づき措置命令を発した。事業者がその取消しを求め、原審は請求を認容して措置命令を取り消した。消費者庁長官が控訴した事案。
判断の要旨
控訴棄却(措置命令の取消しを維持)。「美味しさそのまま」は主観的・抽象的な表現にとどまり、一般消費者はこれを「通常の炊飯機能で炊飯した米飯と同様の炊き上がり」という具体的品質の表示としては認識しないと判断。消費者庁が「炊き上がり」という概念を用いて表示内容を認定した点について、広告表示の意味内容自体の誤った認定であるとした。
実務上のポイント
ネット広告・EC表示に対する景表法対応において、措置命令の前提となる「表示の意味内容の認定」自体を争う際の有力な先例。不実証広告規制(7条2項)の適用場面でも、まず表示内容の特定が適正かを検証すべきことを示しています。
※裁判例詳細ページには事件名・判示事項・裁判要旨の記載がないため、上記は判決文PDFに基づきます。判決文中の当事者名は匿名化されています。
3. 知財高裁・ウェブサイト上の標章使用と結合商標の類否(「餃子フェス」)
知的財産高等裁判所第3部/令和8年6月30日判決/令和8(ネ)10013(原審:東京地方裁判所 令和7(ワ)70055)/商標権侵害差止等請求控訴事件/権利種別:商標権/判示事項:商標の使用、類似性
事案の概要
登録商標「餃子フェス」の商標権者が、イベント告知の看板・画像およびウェブサイト上で使用された「全国ぐっと!!餃子フェス」等の標章について、使用の差止めおよび対象ウェブサイトからの削除等を請求した事案。
判断の要旨
控訴棄却(侵害不成立)。「全国ぐっと!!」と「餃子フェス」は一連一体のものとして把握すべきであり、感嘆符は強調を表す符号にすぎず文を終結させるものではないから分離観察の根拠とならないとした。その上で、結合標章全体と登録商標とは外観・称呼・観念のいずれにおいても相違すると判断した。
実務上のポイント
ウェブサイト上のイベント告知・広告における標章使用が問題となった事例。記述的要素を含む商標に基づく権利行使の限界と、結合標章における分離観察の可否の判断枠組みが参考になります。
4. 知財高裁・タクシー配車アプリと特許侵害(構成要件充足性・均等侵害)
知的財産高等裁判所第2部/令和8年6月29日判決/令和8(ネ)10007(原審:大阪地方裁判所 令和6(ワ)7055)/損害賠償請求控訴事件/権利種別:特許権/発明の名称「タクシー配車管理システム、タクシー配車管理装置及びタクシー配車管理プログラム」
事案の概要
上記特許の権利者らが、配車サービス事業者の製品が特許権を侵害するとして、原告会社につき約3億2619万円、原告個人につき約2168万円の損害賠償を請求した事案。
判断の要旨
控訴棄却。被告製品は、ユーザーが一定の距離範囲内にある個別のタクシー車両情報の中から特定の車両を指定する構成ではなく、複数のタクシー会社の中から会社を選択する構成であって、本件発明の本質的部分において相違するとして、構成要件充足性および均等侵害のいずれも否定した。
実務上のポイント
配車・マッチング系アプリのシステム特許について、UIにおける操作フロー(車両単位で選ぶか事業者単位で選ぶか)の差異が非充足・非均等の決め手となった事例。ソフトウェア関連発明のクレーム解釈・侵害判断の参考になります。
5. 札幌高裁・衆議院解散の司法審査と一票の格差(統治行為論)
札幌高等裁判所第3民事部/令和8年6月22日判決/令和8(行ケ)2/選挙無効請求事件
事案の概要
北海道第1区の選挙人が、令和8年2月8日施行の衆議院議員総選挙について、衆議院の解散が憲法に違反すること、および選挙区割りが投票価値の平等に反することを理由に、選挙の無効を請求した事案。
判断の要旨
請求棄却。衆議院の解散は極めて政治性の高い国家統治の基本に関する行為であり、その法律上の有効無効を審査することは司法権の外にあるとして、いわゆる統治行為論を採用。選挙区割りについても憲法違反はないとした。
実務上のポイント
同一選挙をめぐる一票の格差訴訟の高裁判決が、新着一覧に複数掲載されています(東京高裁令和8年6月12日 令和8(行ケ)2・同5、名古屋高裁金沢支部令和8年6月17日 令和8(行ケ)1、福岡高裁宮崎支部令和8年6月12日 令和8(行ケ)1、広島高裁松江支部令和8年6月9日 令和8(行ケ)1)。これらは本日時点で未精査であり、結論の異同は確認できていません。
本日選別から外したもの
新着一覧には上記のほか、刑事事件(東京高裁令和8年7月1日・殺人、広島地裁令和8年7月3日・強盗致死、静岡地裁沼津支部令和8年7月9日・廃棄物処理法違反、佐賀地裁令和8年7月9日ほか)および行政・国家賠償事件(東京高裁令和8年6月26日 令和7(ネ)2493・刑事施設内の医療対応に関する国家賠償、福岡高裁令和8年6月11日 令和8(行コ)7・懲戒免職処分等取消請求)等が掲載されていますが、インターネット関連性および実務上の重要性の観点から、本日の掲載対象からは外しています。なお福岡高裁令和8(行コ)7は判示事項・裁判要旨がいずれも未掲載で、内容は未精査です。
出典
- 裁判所ウェブサイト「裁判例検索」
- 下級裁判所(速報)新着一覧
- 新着統合一覧(最高裁判例集を含む)
- 知的財産裁判例集 新着一覧
- 各判例の詳細ページ・判決文PDF(上記各項に記載)

