【判例速報】東京地裁・YouTube発言と信用毀損(不競法)、知財高裁・LINEヤフー地図特許ほか計3件(2026年7月30日)
裁判所ウェブサイト掲載の新着裁判例のうち、実務上重要な3件(うちインターネット関連2件)を取り上げます。
【注記】裁判所ウェブサイトには掲載日(公開日)が表示されないため、「新着公開分」の厳密な特定はできません。裁判年月日ベースで直近(おおむね2週間以内)の新着一覧を確認し、7月29日までに本カテゴリで既報のものは除外しています。
1 東京地方裁判所民事第46部 令和8年7月15日 令和7年(ワ)第70435号
信用毀損行為差止等請求事件/請求棄却 ★インターネット関連
事案の概要
弁護士である原告が、同じく弁護士である被告に対し、被告がYouTubeチャンネルに投稿した動画中の発言(原告と思われる弁護士との訴訟について「1件も敗けたことない」「9割とか、それ以上の確率で勝訴しているはず」等)が営業上の信用を害する虚偽事実の流布に当たると主張し、不正競争防止法2条1項21号所定の不正競争に該当するとして同法4条に基づき300万円の損害賠償等を求めた事案。
判断の要旨
請求棄却。裁判所は、被告発言は「記憶定かじゃないですけど」等と前置きされ厳密な正確性を期したものではなく、文脈も極めて曖昧であるとし、「一般の視聴者の普通の注意と捉え方」を基準とすれば、原告・被告が関与した訴訟が実際には10件で被告が9件勝訴していたことに照らしても、「9割」等の発言が客観的事実に反する虚偽の事実とはいえないと判示した。
なお同定可能性(争点1)については、判決文上「仮に同定可能性が認められたとして」との仮定的な説示がされており、この点自体についての結論は明示されていない。
実務上のポイント
- 動画配信での競業者に関する発言を、名誉毀損ではなく不競法2条1項21号(信用毀損行為)で争った事例。
- 「虚偽の事実」性を、一般視聴者基準に加え、断定を避ける前置きや文脈の曖昧さという発言の態様から否定した点が特徴。
- 口頭・即興的な動画発言は「正確性を期したものではない」と評価されやすく、請求側にとってはハードルが高いことを示す判断といえる。
出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
※詳細ページの事件名・判示事項の要旨・裁判要旨欄はいずれも空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。
2 知的財産高等裁判所第4部 令和8年7月15日 令和7年(ネ)第10084号
不当利得返還請求控訴事件/控訴棄却(権利種別:特許権) ★インターネット関連(原審:東京地方裁判所 令和6年(ワ)第70281号)
事案の概要
控訴人(株式会社サピエンス、プラグインフリー・パテント・ホールディング株式会社)が、特許第5475856号「画像表示方法および画像表示用プログラム」の特許権に基づき、被控訴人LINEヤフー株式会社の配信する地図表示方法・地図表示プログラムが本件発明の技術的範囲に属すると主張し、不当利得返還として合計約2億2989万円(サピエンス約3218万円、プラグインフリー約1億9771万円)及び遅延損害金の支払を求めた事案。
判断の要旨
控訴棄却。被告地図表示方法は、本件発明の「各枠要素の原点の座標を演算する」との構成要件を充足しないと判断。被告プログラムではdiv要素の座標は変更されるものの、img要素自体の座標値は一切変更されないことを理由とする。構成要件充足性が否定される結果、間接侵害も成立しないとされた。
実務上のポイント
HTML/JavaScriptで構成されたウェブ地図サービスのブラウザ上の画像表示(スクロール時の描画)について、クレームの「座標を演算する」対象をdiv要素とimg要素に即して厳格に切り分けた事例。ウェブ/SaaS型サービスのソフトウェア特許のクレーム解釈と、実装(DOM構造・スタイル指定)に立ち入った充足性判断の実務例として参考になる。
出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
※詳細ページの判示事項の要旨・裁判要旨・参照法条欄は空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。
3 知的財産高等裁判所第2部 令和8年7月22日 令和8年(ネ)第10009号
損害賠償請求控訴事件/控訴棄却(権利種別:不正競争・営業秘密)(原審:東京地方裁判所 令和4年(ワ)第28365号)
事案の概要
控訴人フォースバレー・コンシェルジュ株式会社が、被控訴人Beyond Technologies株式会社及びその元取締役・元従業員に対し、顧客情報等の営業秘密を不正に取得して営業に使用したと主張し、連帯して5000万円の損害賠償並びに当該情報の使用差止め及び廃棄を求めた事案。
判断の要旨
控訴棄却。裁判所は、モバイルログとドライブログの記録時間に0.5時間ないし18時間程度の間隔があることから、元従業員が不正アクセスにより情報を取得したと認めることは困難であると判断した。
営業秘密の管理性・有用性・非公知性の各要件については、判決文上、明示的な判断は示されておらず(取得・使用の事実が認められないことを理由とする棄却)、この点は未精査である。
実務上のポイント
営業秘密侵害の立証において、アクセスログ(モバイルログ・ドライブログ)の時刻の対応関係というデジタル・フォレンジック的な間接事実によって、不正取得の事実自体が否定された事例。従業員の引抜き・顧客情報持出し類型の紛争では、ログの取得・保存とその時系列的な整合性の確保が立証の要となることを示す。
出典:裁判例詳細ページ/判決文PDF
※詳細ページの判示事項の要旨・裁判要旨欄は空欄のため、上記は判決文PDFに基づく要約です。
今回確認したが本記事の対象外としたもの
- 知的財産高等裁判所第4部 令和8年7月15日 令和7年(行ケ)第10028号(審決取消請求事件) 判示事項の要旨が空欄の個別事案で、7月29日付記事において既に対象外として言及済みのため除外(未精査)。詳細ページ
- 7月29日までに本カテゴリで既に取り上げた判例(最高裁令和8年7月16日 令和6年(オ)第720号、同7月13日 令和6年(行ヒ)第281号、同7月10日 令和7年(さ)第1号、同7月7日 令和6年(受)第1694号、知財高裁令和8年7月15日 令和6年(ネ)第10081号、大阪地裁令和8年7月9日 令和6年(ワ)第8646号、山形地裁令和8年7月15日 令和7年(ワ)第212号、札幌高裁令和8年7月2日 令和6年(行コ)第9号 ほか)は、重複を避けるため除外しています。
出典
- 裁判所ウェブサイト 裁判例検索 下級裁判所(速報)新着一覧
- 裁判所ウェブサイト 裁判例検索 新着一覧(最高裁判例集を含む)
- 裁判所ウェブサイト 知的財産裁判例集 新着一覧
- 各判例の詳細ページ及び判決文PDF(上記各項に記載のURL)
本記事は裁判所ウェブサイト(courts.go.jp)に掲載された公式情報に基づいて作成しています。判決文の全文は各出典リンクからご確認ください。

