弊所FAQ17~「被告は全面的に争う」?~

Q 訴訟における口頭弁論第1回目のニュースでは、ほとんどの場合、「被告は全面的に争う姿勢を見せた」と言っているように思います。いくら訴訟とはいえ、「少しは譲歩する姿勢を見せた」など、バリエーションがあってもよいように思うのですが?

A 口頭弁論第1回目では、原則として「全面的に認める。」「全面的に争う。」の二択しかないからです。したがって、「少しは譲歩しよう」と思っても、「全面的に認める。」ではない限り、まずは「全面的に争う。」というしかありません。

【解説】

訴状には、「被告は、原告に対し1000万円を支払え。」などと、請求内容を端的に示した文章が冒頭に記載されています(「請求の趣旨」といいます。)。そして、請求の趣旨を記載した後、1000万円の請求の根拠(「契約書がある。」等)を、詳細に述べるのです(「請求の原因」といいます。)。

そして、被告は、まず、口頭弁論第1回目において、請求の趣旨に対してどう思うかということを答弁書などで明らかにしなくてはならないことになっています。
しかも、明らかにする際は、原則として、全面的に認めるか、全面的に争うかの二択しか選べないことになっています。

仮に、全面的に認めた場合は、請求の趣旨に挙げた内容がそのまま判決として下ります。↑の例でいえば、判決も「被告は、原告に対し、1000万円を支払え」という判決が出るのです。したがって、全面的に認めた場合の判決が少しでも不都合だと思えば、「全面的に認める」わけにはいきません。

したがって、「全面的に認める」わけにはいかない場合、どんなに譲歩案を持っていても、消去法で「全面的に争う。」というしかないのです。たとえば、「総額で1000万円を支払うのは構わないけれども、分割でお願いしたい。」という場合、まずは「全面的に争う」と言ったうえで、分割払いの交渉をします。

あるいは、「一括で1000万円支払うのも構わないけど、支払いは2か月後にしてほしい。」という場合も、まずは「全面的に争う」と言ったうえで、支払期限の交渉をすることになります。

ということで、「全面的に争う」ように見えても、実際の被告の意向は、千差万別であるというお話でした。