災害弔慰金(災害見舞金も含む)の対象者は意外と広いです
先日、台風15号の被災者支援の勉強会に参加してまいりました。その勉強会において、私も新たな知見を得ましたので、皆様にもお伝えしたいと思います。
その知見とは、
1 災害弔慰金は、災害で直接亡くなった方だけでなく、災害関連死とされた方も含む。
2 災害関連死の範囲とされる範囲は、意外と広い。
というものです。
したがって、災害弔慰金(災害見舞金も含む)の対象者は、意外と広いということになります。
以下、ご説明します。
災害弔慰金というと、字面からして、災害を直接の原因として亡くなった方にのみ支給されそうなイメージがあります。たとえば、水害でいえば、水に流されて亡くなった方とか、大雨からの土砂崩れによって亡くなった方だけを対象にしそうなイメージをもちたくなります。
しかし、実際には、災害を直接の原因として亡くなった方のみならず、災害関連死とされた方も含むのです。
では、災害関連死とはなんでしょうか。恥ずかしながら、私は、災害関連死とは、避難所で亡くなった方・避難生活(車中泊など)で亡くなった方を指すのだと思い込んでいました。
しかし、災害関連死というのは、かなり広い範囲を指すということを知りました。
正確なところを把握されたい方は、内閣府の事例集をご参照ください。
ただ、内閣府の事例集は長いので、私がかいつまんでご説明いたします。
私が一番重要だと考えるのは、内閣府の事例集・参考資料の9ページ目(ページ番号139)です。
ここでは、災害関連死と認められやすいのは〇・認められづらいのは×と記載されています。
そうしますと、まず、「環境の激変」に〇がついています。
つまり、災害によって「環境の激変」がおき、その結果亡くなってしまった方は、災害関連死と認定される可能性があるという意味です。
そして、「環境の激変」として挙げられている項目はどれも重要ですが、一番目を引くのは、「病院の機能停止(転院を含む)による既往症の増悪」というところです。
つまり、直接の死因が、既往症(もともと持っていた病気)であっても、病院の機能停止よって増悪した場合には、災害関連死と認定しうるという意味です。
たとえば、もともと、ガンで余命1年とされていた方が、災害の影響で容態が悪化し、数カ月で亡くなった場合でも、災害関連死と認定される可能性はあるというわけです(内閣府事例集本編61・ページ番号75)。
今回、清水区では断水が起き、病院の機能が一部停止したこともあるでしょう。
したがって、断水の影響で増悪した場合も、災害関連死と認定される可能性があるというわけです。
ちなみに、単に既往症の有無だけでいえば、災害関連死と認定された方のうち、約92%に既往症があったとのことです(内閣府事例集ページ番号5)。
つまり、既往症があるからといって、災害関連死が否定されるわけではないといえます。
また「(地震の)ショック」が単独で挙げられていることにも注目です。たとえば、災害のショックから致死性不整脈で亡くなった方につき、災害関連死と認定されています(内閣府事例集本編6・ページ番号20)。
なお、災害関連死は、自宅で亡くなった場合でも認められることがあります。むしろ、災害関連死とされた方のうち、自宅で亡くなっている方の割合が一番多いです(内閣府事例集本編ページ番号5)。
また、災害発生後3カ月以上経っていても、災害関連死が認められている例は、少なくありません(内閣府事例集本編ページ番号7)。
いかがでございましょうか。「災害関連死」の範囲は、意外と広いということをお示しできたのではないかと思います。
もし、「災害関連死」と認められた場合、災害弔慰金の支給が受けられます。ただ、お金の問題だけではありません。
災害に関連して亡くなった方のご遺族は、ご自身を責めがちになってしまうとも聞きました。「あのとき、ああしてあげれば、あの人は助かったかも知れない。」とずっと後悔してしまうことがあるとのことです。
しかし、災害関連死と認定されることにより、「悪いのは自分ではなく災害である。」という形で気持ちの整理がつくことも珍しくないと聞きました。
つまり、
3 災害関連死と認定されることによって、ご遺族の心理的負担も軽減される可能性がある。
ということです。
金銭的負担のみならず、心理的負担軽減のため、ご自身が災害弔慰金の話を覚えておくと同時に、周囲の方にも広めていただきたいと思います。
清水区役所では、災害弔慰金を含め、台風15号に関する生活なんでも相談会が開かれています。弊事務所でも、御相談をお受けしております。ぜひ、ご活用ください。