動画制作者に伝えたい著作権の話2~「著作権フリー」に要注意!~

さて、今回は、トラブルの例「①動画をアップロードしたところ、著作権侵害である旨の警告を受けた。」についてお話します。

もちろん、私のページを見てくださっている方には、わざと著作権侵害をしようとして動画をアップロードしようとする方は居ないと信じております。
たとえば、「有名な映画をアップロードして、再生数を稼ごう。」とか、「面白いバラエティをアップロードして広告収入を得よう。」などと考えている方はいないはずです。

しかし、それでも、トラブルの例①に巻き込まれてしまう方がいらっしゃいます。それはどういう意味でしょうか。

それは、「著作権フリーの素材を使っていたのに、著作権侵害だと言われた。」というものです。
アップロードしている方は、著作権侵害をするつもりはなかったのに、トラブルに巻き込まれたというものです。
それは、なぜでしょうか。

実は、「著作権フリー」の解釈を誤ってしまったからなのです。

もちろん、完全著作権フリーという素材もあるかも知れません。
しかし、良く目にするのは「非商用利用なら著作権フリー、商用利用なら制限あり」という著作物です。

例えば、「いらすとや」さんです。

いらすとやさんの「ご利用について」を拝見すると、「当サイトで配布している素材は規約の範囲内であれば、個人、法人、商用、非商用問わず無料でご利用頂けます。」という記載があります。
そうすると、よほど変な使い方をしない限り、商用利用が可能と解釈したくなります。

しかし、「よくあるご質問」も拝見すると、「商用利用をすることができますか?」という質問に対し、「媒体を問わず1つの制作物につき20点(重複はまとめて1点)まで商用利用をすることができます。」という記載があります。
つまり、いらすとやさんといえども、商用利用に制限があるのです。
仮に、「1つの制作物」あたり、いらすとやさんのイラストを、21点以上使うと、著作権法違反ということになります。

では、「商用」とはなんでしょうか。
いらすとやさんのウェブサイトでは、「利益が発生するものは商用利用となります。」という記載があります。
(なお、いらすとやさんに限らず、「利益が発生するものは商用利用」と解釈すれば、苦情を受ける確率を下げることができるでしょう。ちなみに、ここでいう「利益」とは、収入と解釈した方が無難です。「収入-経費<0だから、利益は発生しない!」と解釈するのは避けた方が無難でしょう。)

つまり、イラストを直接売らなくても、動画をアップロードすることにより広告料という「利益」が発生する場合には商用利用ということです。

そうなると、今度は、「1つの制作物」とは何を指すのかが気になると思います。
いらすとやさんのウェブサイトによると、「1配信・1動画」を指すと思われます。
イメージ的には1つの動画ファイルということになろうかと思います。
ただし、この制限を免れようとして、もともと1つのファイルだった動画を、いくつもの短時間の動画に分けてアップロードするということは、全くお勧めしません。

さて、その他よくあるパターンとしては、商用利用でも著作権フリーではあるものの、動画内に著作者の名前を明記するよう求める規定があったり、著作者ウェブサイト(ホームページ)へのリンクを張るよう求めるパターンがあります。
音楽の著作権フリー素材で良く見られます。
たとえば、動画のどこかで「作曲者:○○音楽工房様 https://……」と記載しなければならないパターンです。

ということで、「著作権フリー」といっても色んな制限がかかっていることが極めて多いです。
著作権フリー素材を使う前には、利用規約を熟読することをお勧めします。
もし、利用規約を熟読しても分からない場合には、著作者に確認した方が良いです。
もし、著作者から返事がない場合には、弁護士に相談してください。一緒に考えましょう。